アメリカンドリームの現在 スペースXとメジャースポーツ初の女性GM

2つのアメリカンドリーム

昨日、マーケットはモデルナ(MRNA)の新型コロナウィルスワクチンの95%で有効性が確認されたというニュースに沸き立ちました。
S&P500指数は41.76(1.16%)上昇し、3626.91で終値で市場最高値を更新しました。

昨日はワクチンニュースのほかに私が注目したニュースが2つあります。

スペースXの有人宇宙船打ち上げ成功

こちらは日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが登場しているので日本でもニュースになっていました。

スペースX社HPより

何がすごいかというと、今回ロケットを打ち上げたスペースXはテスラ創業者のイーロン・マスク氏が立ち上げた民間企業だということです。
これまで宇宙開発は東西冷戦の時代から主にアメリカとソ連の国策としてプロジェクトが進められてきました。20世紀の宇宙開発は国の威信をかけた採算度外視の国家プロジェクトでした。

スペースXは2020年5月に民間企業として初の有人宇宙飛行を成功させ、今回が2度目の有人宇宙飛行プロジェクトです。

宇宙船事業は航空業界の雄ボーイング(BA)も開発に乗り出しています。世界最大の航空宇宙機器開発会社より2002年設立のベンチャー企業が先に有人飛行を成功させることができるということが何ともアメリカらしいと思います。

スペースXは同じくイーロン・マスク氏が創業したテスラ(TSLA)と異なり、いまだ株式上場をしていないいわゆるユニコーンです。今年7月のモルガン・スタンレーの試算によるとスペースXの企業価値は1750億ドル(18兆3750億円:1ドル=105円換算)と見積もられています。日本の上場企業と比較するとこれを上回るのは時価総額1位のトヨタ自動車のみです。

個人的にはスペースXの損益計算書(PL)やバランスシート(BS)を見てみたい気もしますが、怖いもの見たさな面もあります。
たとえ上場したとしても超グロース株で超高PER、私の投資対象には確実に入らないと思いますが。。

北米メジャースポーツ初の女性GM(ゼネラルマネージャー)誕生

もう一つのニュースは北米メジャースポーツで初の女性GM(ゼネラルマネージャー)が誕生したというニュースです。

フロリダ ・マーリンズは新しいGMにキム・アング氏が就任すると発表しました。

日本のプロ野球でもGMというポジションを設けているチームはありますが、MLBのGMとはまったく別物と考えていいと思います。

MLBのGMはまさに実務のトップ、企業で例えると専務執行役員のようなポジションです。監督はあくまでも現場の責任者であり企業で例えれば現場の部長といったところでしょうか。監督はポジション的にはGMの下に置かれていて中間管理職のような色合いが強いです。

MLBの30人いるGMのうち、8人は野球未経験者です。彼らの多くは経営学の学位(MBA)を持っていたり、統計学の専門家であったりします。

野球の監督は英語ではManagerと呼ばれます。日本でマネージャーと言うと高校野球の女子マネージャーなんかが連想されますが、英語でマネージャーは監督を指します。まさに呼称通り、仕事は選手をマネジメントすることです。あくまでも与えられた条件の中でチームのパフォーマンスを最大化させることが監督の仕事です。
一方、GMは監督のManagerの上にGeneralが付くことからも監督よりも権限が大きいことが分かると思います。

日本ではプロ野球の監督は名の通った元選手が就任することがほとんどですが、MLBでは名選手が監督になることは年々減ってきているように思います。
監督業が中間管理職の色合いが強くなっていることが大きな理由のひとつだと思います。球団もネームバリューや野球観よりもマネジメント能力に重きを置きます。自身の現役時代、メジャーに上がれずマイナーリーグ止まりだった監督がMLBにはたくさんいます。

では、なぜ名選手ではなくメジャー経験のない無名の元選手を監督に迎えたり、野球未経験者や女性をGMに迎えたりするかというと、それは組織の目的が明確になっているからだと思います。それはシーズンで勝つことです。勝つためなら野球未経験者であろうが女性であろうが有能な人を登用するというビジョンが明確だと思います。

一般企業でも言えることだと思いますが、組織の目的が明確になっていて、あらゆるしがらみよりも目的の達成に注力することがアメリカの社会の生産性の高さを実現させていると思います。そして日本は社会全体としてその点が大きな弱点だと思います。個々人は有能で勤勉な人が多いのに社会の中のしがらみが多すぎるのが日本社会ではないかと思います。

スペースXの成功や女性GMの登用は機会の平等が結実した結果と言えると思います。よく(特に今回のアメリカ大統領選前から)人権派と資本主義者を対立軸に置く意見をネット中心に見かけますが、機会の平等は資本主義とは対立しません。

なぜなら有能な人に人種や性別、出自に関わらず社会で活躍してもらうことは社会全体の効率的な資源の活用には必要不可欠だからです。
有能な人材が性別や出自、人種を理由に埋もれてしまうことは会社全体、ひいては社会全体にとって大きな損失です。

アメリカンドリームと格差社会

アメリカンドリームのような大きな夢を実現させる原動力を持つには社会の中である程度の格差があることは不可欠です。いわゆるハングリー精神が醸成されやすいからです。
格差ゼロを理想とした共産主義が失敗に終わったもっとも大きな理由のひとつはこの点にあると思います。格差がなくなってしまうと誰もリスクを取って新しいビジネスを起こしたりテクノロジーの開発をしたりしようなどと思わなくなります。

一方で日本は戦後長らく一億総中流の時代が長く続きました。社会は比較的安定的で平和な時代だったと思いますが、そういった社会ではアメリカのような新しいテクノロジーや大胆な新興企業は起こりにくいと思います。

比較的格差が大きくても誰でも成功する可能性があり、新しい技術や企業が次々と興ってくる社会か、格差が比較的小さく安定しているが、社会全体の新陳代謝は低い社会か、資本主義に取って代わる革新的な新しい社会構造が発明されない限り、どちらの社会がいいかは永遠に答えの出ない問いだと思います。


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