ソフトバンクGの現在地と孫正義氏の評伝『あんぽん』

米国株投資をしている私が唯一決算をフォローしている日本企業

私はアメリカ株に投資をしていて、基本的に日本企業の業績や決算というのはフォローしていませんが、唯一、毎回の決算説明会を欠かさず見ているが孫正義社長のソフトバンクグループです。

ソフトバンクグループは国内携帯事業をソフトバンクKKとして分社化して以降、名実ともに純粋な投資会社になりました。投資会社という性格上、ソフトバンクの決算を見るときは他の会社のように営業利益や純利益、EPSを確認するのはあまり意味がないと思います。

⬆️は以前の決算資料で示された同社の保有資産のグラフです。現在はarmをエヌビディア(NVDA)に売却し、代金の一部をエヌビディア株で受け取っているので資産構成が少し変わっていますが、保有資産の約半分をアリババ(BABA)株が占めていて、さらにソフトバンクKKやTモバイル(TMUS)を加えた上場株が保有資産の多くを占めているというのは変わらないと思います。

ソフトバンクGは何かを製造・販売したりサービスを提供したりして売上を得ているわけではないので保有資産の価値の上下が会計上の売上や利益などの業績に直結します。そのため基本的に株式市場が好調なときには業績は大きく伸長し、昨年3月のように株式市場が大きく下落すると同社の利益も大きく落ち込んでしまいます。

同社の決算報道を見ると、『ソフトバンクG、過去最高益』や『ソフトバンクG、1兆円超の赤字』などという見出しをよく目にしますが、非常に違和感を覚えます。孫社長も決算発表説明会で時々念を押されますが、この会社にとって会計上の売上や利益はさほど重要ではなく、重要なのは保有資産の価値がどれだけ上下したかです。会社全体が投資ファンドになっているという感覚を持ったほうがいいかと思います。

ソフトバンクGの今後のゆくえを占ううえで、重要なのはやはりソフトバンクビジョンファンド(SVF)でしょう。今回の決算では現在までの進捗が報告されていました。⬆️は現在の投資の進捗グラフですが、SVF1は総額約10兆円の投資をすでに終えていて、SVF2の投資が始まっています。今後、SVF2の投資額は徐々に増えていくでしょう。
しかしSVF1でも投資先の会社が上場を果たしたのはまだ1割程度です。投資の成否はこれからということでしょう。

これまでの上場株の投資成績です。ほとんどの銘柄でプラス、10バガーも2銘柄あります。現在は市場環境が非常にいいので出来過ぎの感すらあります。今後もこのペースを落とさずに投資先の会社が上場を果たし、株価をコンスタントに上昇させていくことができるか否かが成功のカギとなると思います。

私はソフトバンクGの株主ではありませんが、野球少年がプロ野球選手に憧れるような感覚で、株式投資をしている一個人投資家として孫正義さんの今後の活躍を見守っていきたいと思っています。

『あんぽん 孫正義伝』

最後に先日、孫正義さんの評伝を読んだので紹介したいと思います。数年前に出版され話題になった本で『あんぽん 孫正義伝』という本です。

題名の『あんぽん』は孫正義氏の通名の安本の訓読みからきていて、よく「あんぽんたん」になぞらえて揶揄されていたようです。孫氏は実業家として活動していくにあたり、出生名でもある「安本正義」ではなく「孫正義」と名乗り、日本国籍を取得した際に戸籍上の名前も安本から孫に変えています。

この本では数多く出版されている他の孫正義氏に関する本のようにソフトバンク設立前後の彼の業績や仕事術などにはほとんど触れられておらず、もっぱら彼の在日朝鮮人としてのバックグラウンドや朝鮮人だった彼の祖父母が朝鮮半島から日本にやってきた経緯、そして彼の一族が戦後の貧しい時代を生き抜く姿にスポットを当て、孫正義という人間がどのような環境から、いかにして誕生したのか、その背景を探る本です。

NHKに著名人の先祖がどのような人だったのかを調査する『ファミリーヒストリー』というドキュメンタリー番組がありますが、あの番組に近いテイストがあると思います。

以前の記事で、孫氏が自身の祖母について話している動画を紹介したことがありますが、孫氏が話していたあのおばあちゃんはこの本の重要な登場人物のうちの一人です。

当時の在日朝鮮人に対する日本社会からの差別や偏見、そして彼らの厳しい生活は、21世紀をマジョリティの日本人として衣食住に困らない環境でぬくぬくと生きている私には到底想像の及ばない苛酷さや理不尽さがあったと思います。

そういった劣悪な環境から這い上がってきた孫正義氏や彼の父親の三憲氏(キャラクター的にはかなりアクの強い人物のようですが)のハングリー精神やバイタリティには舌を巻くほどですが、この本で描かれているように戦後、在日朝鮮人が直面した理不尽な差別や貧困を考えると、それほどのバイタリティや力強さがなければ生き抜くことができなかったんだなと妙に納得させられました。