Black lives matter 今アメリカで起こっていること

警察官による黒人殺害に端を発した人種差別反対を主張する抗議行動が止まりません。先週末にはワシントンDCで過去最大級の100万人規模の抗議行動がありました。
今のところ、マーケットはこの騒動に関してはほぼ無反応です。基本的に経済や企業業績に大きな影響が出ない限りは暴動や戦争などにはマーケットは反応しません。冷たく感じるかもしれませんが、株価というものは将来キャッシュフローの合計を一定の割引率で割り引いたものである以上、企業業績に影響が出ない限りマーケットへの影響は限られます。

きっかけは5月25日にミネソタ州ミネアポリスで、20ドル札の偽札を使った疑いで拘束されていた黒人男性のジョージ・フロイド氏が警察官に首を9分近く圧迫され死亡した事件でした。警察官が膝でフロイド氏の首を圧迫している様子が通行人によって動画で撮影されていて、その動画がSNS上で拡散されたことによって抗議活動が全米に広がりました。以前、ソーシャルメディアのあり方についての記事でも紹介したように、トランプ大統領は抗議活動に対し、当初から非常に強硬な態度を取り続けています。結果的に彼の言動が抗議活動参加者の怒りの火に油を注ぐかたちとなり、事態が一向に鎮静化しない一因になっています。

1年間で約1,000人の市民が警察官によって殺害されている

ワシントンポストの記事によると、2019年にアメリカ国内で警察官によって殺害された人の数は1,003人です。ちなみにEUは3人、日本は0人でした。
アメリカは銃社会ですから、被疑者が発砲してきたので警察官が射殺したというようなケースも1,000人の中に入っていると思われますが、それを差し引いてもすごい数です。日本人の感覚では行政職員である警察官が被疑者を裁判にかける前に殺害するという事態は異常に感じますが、アメリカでは日常茶飯事と言っていい状態です。日本では警察官が発砲しただけでニュースになりますが、アメリカでは発砲事案が何件あったのかよくわからない状態です。発砲した際には報告されることになっていますが、徹底されていないのが実態です。

アメリカの警察には労働組合が存在する

全米各地での抗議活動に警察が暴力的な対応を取っていることが混乱に拍車をかけています。ニューヨーク州バッファロー では抗議活動参加者の高齢男性を警察官が突き飛ばして転倒させ、男性が重傷を負う事件が発生しました。事件を起こした警察官2人は停職処分となりましたが、警察組合を中心に現場の警察官からは処分に対して反発が起こっています。今回、抗議活動では差別反対とともに警察改革が訴えられていますが、警察組合(労働組合)がその実現の大きな障害になっているという批判があります。具体的には、警察官による銃器の使用の厳格化、首絞めの禁止などが訴えられていますが、警察組合は警察官の安全確保を理由にこういった警察改革に対して消極的です。ちなみに日本の警察官には労働組合を組織することは法律上、認められていませんので、日本の警察には労働組合は存在しません。

事件の各分野への影響

トランプ大統領は一連の火に油を注ぐような言動で支持率が低下しています。
一方、野党民主党から大統領選への立候補が決まっているバイデン氏はトランプ氏を批判していますが、警察の予算打ち切りなど、警察に対する強硬的な政策には賛成していません。大統領選への影響は大きいですが、結果がどう転ぶかはまだ予想が難しい状況です。

連日の抗議活動によるコロナウィルスの感染の再拡大も懸念されます。この事件の抗議活動だけが原因ではありませんが、テキサスなど一部の州では新規感染者数が再び増加傾向にあります。

以前、孫正義さんの記事でも書きましたが、差別の屈辱は受けた側でないとわからないと思っています。日本に暮らす日本人は特に圧倒的マジョリティですから、日本人がアメリカの黒人の怒りを100%理解することは難しいことだと思います。日本国内の報道では抗議活動に乗じた暴動や略奪が注目されがちで、根本となっている黒人の怒りや日頃から受けている差別に関する報道が圧倒的に少ないように感じます。黒人というだけで警察官に職務質問される(日本の職務質問と違って、アメリカでは時には後ろ手の状態でうつ伏せにさせられる等、屈辱的な体勢を警察官に強要されることもあるようです)など、日頃の些細な出来事の不満が積もり積もって今回の事件をきっかけに爆発しているという印象を受けます。
一方でアメリカは銃社会ですから、現場の警察官は常に銃撃されるリスクに晒されているという感覚に襲われ、それが時に過剰反応となって差別意識が表面化してしまうことがあるように見受けられます。なかなか根深い問題だと思います。


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