今の上昇相場に乗っかるのは少し危険だと思う 米政権と共和党との亀裂

週末にかけて上昇

週末にかけて株価は上昇しました。

先週末、トランプ大統領のコロナウィルス感染が明らかになり一時下落しましたが、大幅な下落はしませんでした。
6日に一時急落しているのはトランプ大統領が追加の経済対策をめぐる議会との協議打ち切りを突然ツイッターで表明したことによるものです。
トランプ大統領はその日のうちに個別の対策案に関しては協議する用意があるとツイートし、マーケットはそれを安心材料に週末にかけて上昇しました。

今週の上昇相場をどう見るか?

先週から今週にかけてマーケットはトランプ大統領に翻弄されています。
先日、『トランプ氏が追加経済対策協議停止を表明 10月相場の転換点』かという投稿をしましたが、前述のように10月相場の転換点にはなりませんでした。つくづく相場を予想するのは難しいなと思います。

私はこのまま上昇相場が大統領選まで続くとは思いません。
現在の上昇は追加経済対策に対する期待が大きな上昇のモチベーションになっています。一旦、トランプ大統領の協議停止表明で期待が失望に変わりかけましたが、トランプ氏がマーケットの期待を煽るようなツイートをしたことと民主党が協議継続を受け入れたことで、再び期待が膨らんでいます。

マーケットが注目する追加経済対策のゆくえ

私が上昇相場はそう長く続かないのではないかと考える理由は大統領選前に追加の経済対策がまとまるのはかなり難しいのではないかと思うからです。
経済対策成立には2つのプロセスを通過させる必要があります。

①議会民主党(ペロシ下院議長)と政権側(ムニューシン財務長官)との協議での妥結
②議会上下両院での採決、賛成多数(下院は民主党、上院は共和党が多数)

このうち、①はまとまるかもしれません。
トランプ政権の支持率は大統領のコロナ感染後、過去最低水準まで下落しています。共和党寄りのFox Newsの世論調査の結果ですら、バイデン氏との差は10ポイントまで広がっています。

トランプ氏の最近の行動はかなりの焦りを感じさせます。一旦は追加経済対策の協議停止をしたものの、その後事実上の協議継続を表明、最新の政権案ではむしろ経済対策の総額を上積みして民主党案により近い案を提示しています。一部報道では大統領は方針を180度転換したと表現されています。
政権、共和党、民主党それぞれから提案されている最新の経済対策の総額は以下の通りです。

政権案共和党案民主党案
1.8兆ドル5,000億ドル2.2兆ドル

共和党の案だけケタがひとつ違います。共和党の案は9月に示され、否決されたものですが、それ以降共和党から具体案は示されていません。

上に示した経済対策成立に必要な2つのプロセスのうち、②のプロセスを通過するには共和党議員が賛成する必要がありますが、そこでキーマンとなるのはトランプ大統領でもなくムニューシン財務長官でもなく、議会共和党のトップであるマコーネル上院院内総務です。

最近、マコーネル氏はあからさまに政権から距離を置き始めているように見えます。
彼は9月以降、ホワイトハウスには行っていないと明らかにしました。理由を政権側のコロナ対策に同意できないからだとし、言外に政権のコロナ対策を批判しています。
さらに昨日、経済対策が11月3日の大統領選前に成立する見込みは低いだろうと発言しました。

これは私の推測の域を出ませんが、マコーネル氏はトランプ氏の敗北を覚悟し始めたように見えます。少し悪い言い方をすれば、トランプ氏を見限った可能性があると思います。もちろんマコーネル氏も政治家ですから、あからさまに共和党とホワイトハウスとの対立を煽ったり、政権を直接批判したりはしないと思いますが、腹の底ではトランプ敗北の覚悟とそうなった場合の計算を始めていると思います。

大統領選で敗北となった場合、彼の次なる使命はなんとしても議会の上院下院のどちらかの多数派を死守することです。本来は上下両院での多数を得ることを目指さなければなりませんが、上下両院の多数派を民主党が取る勢いとの報道もありますので、上院下院どちらかを取れれば御の字という情勢になりつつあります。
議会選挙に勝つには保守派の支持はなんとしても得なければなりません。彼は追加経済対策の成立に協力することと、大型の経済対策に対する党内の経済保守派の反発を天秤にかけたとき、経済対策成立による共和党への支持拡大よりもそれに対する保守派の反発のほうが大きいと考えているのではないでしょうか。

先日のトランプ氏の追加経済対策協議停止の記事の際にも言及したように、マコーネル氏は協議停止を受けて、それに賛成する声明を出しています。上院の共和党議員の賛成は必要不可欠で、たとえ政権側と民主党が妥結したとしても上院で賛成多数を得なければ、成立には至りません。マコーネル氏の昨日の発言は、議会共和党はもはや経済対策成立を諦めたかのように聞こえます。

大統領選までに追加経済対策が成立しない、そして11月3日の大統領選を通過しても結果がなかなか判明しない、そして判明したとしてもバイデン氏が勝利した場合、その結果をトランプ氏が受け入れず結果が宙ぶらりんの状態になってしまう、というようなことが起こるとマーケットの混乱は避けられないと思います。
今週の相場の上昇の勢いはなかなかのものでしたが、焦って乗っかってしまうのは危険だと思っています。