今のアメリカ株は割高だけど割高じゃない

FOMCの結果は据置き

16日に結果が公表されたアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)によるFOMC(連邦公開市場委員会)では、金利・資産買い入れ額・買い入れ債権の年限などすべて据え置かれました。

発表されたプレスリリースでは「米国債などの購入を、完全雇用と物価安定に近づくまで継続する」とし、資産買い入れによる量的緩和策の長期化を示唆しました。

⬆️はアメリカの失業率のグラフです。
今年のパンデミック直前の失業率は3.5%程度でした。これは歴史的な低水準で、自己都合退職者や転職者以外の労働意欲のある人はもれなく働いている状態である完全雇用の水準です。

3月のパンデミック以降、アメリカの失業率は一時、14%台まで急上昇しましたが、その後早いペースで低下しています。グラフは10月現在のものですが、直近の11月の雇用統計では失業率は6.7%まで低下しています。

今回のFRBの声明は「急速に失業率は下がってきているけど、まだまだ完全雇用には程遠い。完全雇用の目処がつくまでは量的緩和はやめませんよ」という宣言でした。量的緩和が長期化する以上、利上げに関しても少なくとも2021年中はないと見ていいと思います。

直近のアメリカのインフレ率は1.2%です。FRBはインフレ率2%を物価安定目標に定めています。今回の声明では、完全雇用と同様にこの目標達成までは量的緩和の手を緩めないと表明しています。ちなみに前回のFOMCの際にFRBは、物価上昇局面では押し並べて2%程度で落ち着くならば、インフレ率が2%を一時的にオーバーシュートすることも容認すると表明しています。インフレ率の面からもまだまだ量的緩和を緩める段階にはないとパウエルFRB議長は考えています。

インフレ率2%というのは緩やかなインフレです。
FRBに限らず、各国の中央銀行は物価上昇率を2%と定めることがよくあります。日銀の黒田総裁が就任したときに示した物価安定目標も2%でした。経済にとっては緩やかに物価が上昇し、同時に人々の給与も緩やかに上昇していくという状態が理想で、その物価上昇水準はおおよそ2%だろうと考えられているということです。

割高だけど割高じゃないアメリカ株式市場

先日、『本格的なバブル相場はまだ始まっていない』という記事を書きました。
この記事の中で2022年までの市場コンセンサス予想EPS(一株あたり利益)と12月15日のS&P500の終値3694.62と予想EPSをもとに算出したPER(株価収益率)のグラフを掲載しました。

2020年2021年2022年
予想EPS139169195
PER26.58倍21.86倍18.95倍

ちなみにTTM(Trailing Twelve Months、直近12ヶ月)のS&P500の実績EPSは2020年Q2時点で99.23です。この数字をもとにPERを算出すると37.3倍となり、さらに割高になります。

37.3倍というのは非常に高水準です。直近のバブルである2000年前後のITバブルのバブル相場でもS&P500のPERは30倍前後でした。それをも上回る水準です。

しかし、『本格的なバブル相場はまだ始まっていない』の中で述べたとおり、バブルの芽が生えつつあるかもしれませんが、まだバブル相場には突入していないと思います。

黒い線がS&P500の益回り、赤が10年債利回り、青がS&P500の益回りから10年債利回りを引いたギャップを表しています。

株式益回りはPERの逆数です。PERが26倍であれば、益回りは1÷26=3.8%、PERが37倍であれば益回りは2.7%です。

現在、10年債利回りは0.95%近辺で推移していますから、単純比較すれば株式の方が圧倒的に妙味があるわけです。かつて80年代から90年代にかけては債権利回りが株式益回りを上回っている時代がありましたから、株式益回りと債権利回りが同じ水準にあってもおかしいことではありません。単純比較で言えば、現在の低金利では株式のPERが100倍(益回り1%)までは正当化されることになります。

株式投資はリスクを背負いますので、PER100倍というのはさすがに単純計算が過ぎると思いますが、少なくとも予想EPSベースのPER26.5倍と言うのは決して特別割高という水準ではないと思います。さらに2022年の予想EPSによるPERでは20倍を切ります。もちろん、このEPSは2022年にはコロナが完全に収束しているということが前提ではあり、いまだコロナ収束の目処は不透明なのである程度割り引く必要はあると思いますが、それでも特別割高とは言えないと思います。

今のアメリカ株式市場は数字を一見すると割高ですが、よく分析すればバブルと騒ぐほどの割高ではないと言えると思います。目先の数ヶ月、短期的には調整があるかもしれませんが、調整が来れば、それは絶好の買い場だと思います。


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