所有からシェアへ 消費者マインドについていけない企業は滅びる

めっきり聞く機会が減った音楽

先日、久々にiTunesを開きました。

学生時代はつねにイヤホンかヘッドホンを携帯していて、どこに行くにも音楽を聞いていました。

当時は音楽配信はまだなかったか、あってもポピュラーではなかったので、TSUTAYAなどでせっせとCDを借りてきてPCのiTunesにダウンロードしてiPodで聞いていました。

どういうわけか、就職して社会人になると、あまり音楽を聞かなくなってしまいました。今は移動の電車内では本を読んでいるか、YouTubeの動画を見ていることが多いです。たまに車に乗ることもありますが、運転中はもっぱらラジオを聞いています。iPhoneに入っている音楽はめっきり聞かなくなってしまいました。

そんなわけで久々にiTunesを開いたわけですが、曲数を見てみると、8,958曲ありました。よくもまぁこんなに集めたなと我ながらに思います。

所有からシェアの時代へ

私がTSUTAYAでCDを借りながらせっせとiTunesに音楽をダウンロードしていたのはせいぜい10年ほど前の話です。

よくインターネットが人々の生活を変えたと言いますが、私が大学生当時はインターネットはすでに十分普及していました。iPhoneは登場したばかりで大多数の人はまだガラケーを使っていましたが、自宅のパソコンは常時ネットに繋がっている状態でした。

20年前、30年前の生活と比較すればインターネットの存在感が生活のなかで大きくなったことでライフスタイルは大きく変わったと思います。ただ、10年前と現在とでは一般消費者が使っているハード面ではそこまで大きな変化はないと思います。

むしろ、変わったのは人々のマインドの方が大きいのではないでしょうか。所有を志向するマインドから共有(シェア)するというマインドです。
特に趣味に関する消費はその傾向が顕著だと思います。

最近はあまり聞きませんが、シネフィルという言葉があります。日本語では「映画狂」「映画オタク」などと訳されます。

90年代、2000年代にシネフィルというとただ単に映画が好きな人ではなく、コレクターというニュアンスがありました。シネフィルは映画という形のないコンテンツだけでなく、フィルムやVHS、DVDなど映画に関係する形のある物の愛好者でもあります。まさにオタクというのがしっくりくる訳語だと思います。

映画監督のクエンティン・タランティーノはシネフィルを自称している人で、まさに映画マニアがそのまま勢いで映画監督になってしまったような人です。
彼が以前、動画配信で映画を見るのは好きではないと発言している記事を読んだことがあります。彼は映画監督になる前はレンタルビデオ店で働いていて、古今東西の映画をまさに貪るように観ていたそうです。

マニアやオタクと呼ばれる人たちにとっては所有することに意義があると考える人が多いように思えますし、そういった人はこの先もある一定程度存在するでしょう。しかしこれから先はそうでもない限り、所有にこだわるマインドというのが人々から消えていくと思います。

トヨタ自動車が最近、KINTOという車のサブスクリプションサービスを展開しています。

月々、定額を支払えば3年間、車を利用できるというサービスです。「夢のマイカー」なんて言葉が昔から日本にはありますが、そんな車ですら所有からシェアへというマインドの変化が徐々に起き始めているのだと思います。

以前、ソフトバンクの孫社長が自動運転が100%普及すれば、一般の人は車を所有しなくなると言っていましたが、それは遠からず、実現すると思います。もしかすると20年、30年後にはそうなっているかもしれません。

孫社長はそうなれば、車は乗りたいときにアプリで呼びだして目的地で乗り捨てるものになる、ライドシェアが社会インフラになると言っていましたが、その通りだと思います。

ライドシェアはアメリカの企業ではウーバー(UBER)やリフト(LYFT)があります。今はコロナ禍で大逆風が吹き荒れていますが、もし20年、30年生き延びることができれば将来性はかなりあると思っています。(ただ、ウーバーもリフトも20年、30年生き延びられるかがまだ不透明なので個人的には投資するのは時期尚早だと思っています。)

既存の企業でもシェアする消費を味方につける必要があり、実際にそうなりつつあります。

例えば、アップル(AAPL)です。
アップルは10年前、基本的にデバイスを売るビジネスでした。

こちらはアップルの2010年のセグメント別の売上ですが、基本的にはモノを売るビジネスモデルです。各セグメントが「iPhoneと関連製品およびサービス」と製品とサービスの売上が一体になってしまっているので、モノの売上とサービスの売上の比率はわかりませんが、サービス自体が独立したセグメントになっていなかったので、それほど大きな比重は占めていなかったと思われます。

こちらは2019年のセグメント別売上です。セグメント自体が「製品」と「サービス」に分かれており、サービスの売上は全体の17%を占めます。さらに直近3年でその割合は右肩上がりに上がっています。

「サービス」には音楽配信サービスの「アップルミュージック」やクラウドサービスの「iCloud」、動画配信サービスの「アップルTV+」の売上が含まれます。どれも消費者は何かを所有するためでなく、シェアするためにお金を払っています。

アップルはモノを売るビジネスからサービスを提供するビジネスへ転換を図ろうとしています。あくまでもアップルはデバイスメーカーですから、「製品」セグメントがゼロになることはないと思いますが、この先しばらくはサービスの売上比重が年々高まっていくでしょう。

アップルのビジネスモデルの転換は消費者の所有からシェアへのマインドの変化が根底にあり、この先10年はあらゆる分野のビジネスで、いかにシェアする消費を見方に付けられるかが大きなカギになってくると思います。
逆に、いつまでもモノの製造・販売に固執している企業の将来は厳しいと思います。

インターネットに端を発した技術革命は消費のスタイルも変容させようとしています。