日本の年金基金の投資収益は57.5兆円! でもよく考えるとしょぼい

先日、日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2019年度の運用損益が8兆2831億円の赤字になったというニュースがありました。

公的年金運用、17.7兆円の赤字 新型コロナで過去最大 1~3月期(時事通信) – Yahoo!ニュース

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3日、2020年1~3月期の運用損益が四半期として過去最大となる17兆7072億円の赤字になったと発表した。赤字は5四半期ぶりで、新型コロナウイルスの流行に伴う株安が大きく響いた。この結果、19年度の運用損益は8兆2831億円の赤字に陥った。 …

年金の保険料って結構高いですよね。私も給与明細を見ると結構引かれててそのたびに、「その金、投資資金に回せればなぁ」と思ったりします。
ただ、今回のようなニュースを見ると、「ああ、ちゃんと株式でリスクをとって運用しているんだな」と思う一方、どうも報道が不安を煽っているというか、「私たちの大事な年金を3ヶ月で17兆円も溶かしてけしからん!」といった方向に誘導しているように見えてしまいます。見出しには通期ではなく1〜3月期の17兆円という数字を持ってきてますし。

以前、サウジアラビアの政府系ファンドPIF(Public Investment Fund)を紹介したことがありました。

日本のGPIFはイニシャルにすると似ていますが、こちらはGovernment Pension Investment Fundです。サウジのPIFはあくまで政府系ファンドであって年金の積立金を運用しているわけではありません。

運用額はサウジのPIFが約3,000億ドル、一方の日本のGPIFは約1.4兆ドルなので圧倒的に日本のGPIFの方が大きいです。GPIFは運用額で世界最大の年金基金です。

2019年度は-5.2%の赤字です。まぁ、3月末締めですからコロナショックで一番株価が下がっていたときに締めていることになるので当然といえば当然の結果だと思います。

2001年の運用開始来の投資収益は57.5兆円ということで、なかなかじゃないかと一瞬思いましたが、

投資収益率 2.58%(年率)

・・・しょぼくない?と正直思ってしまいました。

S&P500の2001年の4月から2020年3月までのリターンは配当再投資込みで年率6.37%、配当再投資なしでも4.33%です。完敗と言っていいでしょう。

日経平均で比較しようとしたのですが、2020年1月までのデータしかありませんでした。2020年1月までのリターンは配当再投資込みで4.61%、配当再投資なしで2.9%です。3月の相場の下げはかなり大きかったのでもしかすると配当再投資なしのパフォーマンスにはGPIFは勝っているかもしれませんが、おそらく1月時点で年率4.61%ある配当再投資込みの日経平均には勝てていないでしょう。

GPIFの資産構成割合はわかりやすく、

国内債権 35%
国内株式 25%
外国債権 15%
外国株式 25%

となっています。債権:株式=1:1ということになります。
公的年金なのであまりリスキーなポートフォリオにできないことは重々承知ですが、それでも少し保守的すぎるかなと思います。ちなみに今の比率は2014年に安倍政権に政権が交代した後、改定されたものです。それまでの投資比率は以下の通りでした。

国内債権 60%
国内株式 12%
外国債権 12%
外国株式 11%

短期資産 5%

短期資産がどういったものを指しているのかはわかりませんが、公的年金という性格上、あまりリスキーなものではないでしょう。債権が7割を占めていたことになります。

ここから先は私の妄想ですが、おそらくGPIF内部ではまだまだポートフォリオが保守的だという意見があるんだと思います。GPIFのHPによくあるご質問という項目があるのですが、その中で海外の年金基金のポートフォリオと比較をしています。

CalPRES:カリフォルニア州職員退職年金基金
CPPIB:カナダ年金制度投資委員会
GPF-G:ノルウェー政府年金基金-グローバル

いずれも株式比率はGPIFより高いです。こういったデータを掲載するあたり、GPIFには株式比率を引き揚げたいという潜在的な思惑があるのかなと勘繰ってしまいます。

年金基金と言えどもファンドマネージャーがいるアクティブファンドに変わりはありません。アクティブファンドが長期でインデックスに勝つのは至難の技です。
一方で公的年金という性格上、100%株式に注ぎ込むということは不可能でしょう。しかし、債権:株式=1:1というのはあまりに保守的だと思います。数年前まで7割が債権だったということはそれまで運用で増やそうという意識がほぼなかったと言われても仕方ないと思います。それでも当時の報道や国会での議論には「株式はリスクが高すぎる」や「株価を吊り上げるために年金を利用しようとしている」といった批判がありました。

日本は年々、人口が減っています。積み立てた年金は運用して増やしていかないと将来、現在30代以下の世代や将来世代には年金支給自体が困難になっている可能性が高いです。このまま何もせずにいる方がよっぽど無責任だと私は思います。