エスニックジョークに見る昔の日本企業の立ち位置

日本ではそこまでポピュラーではないかと思いますが、エスニックジョークというものがあります。国民性の違いをネタにしたジョークです。人種差別が社会問題化していて、社会全体が差別に対してセンシティブになっている今のアメリカではなかなかそういったジョークは言いづらい雰囲気かもしれませんが、アメリカでは人気のあるジョークです。
それぞれの国の国民性はおおよそこんな感じです。

日本人=真面目、ルールを死んでも守る、団体行動
アメリカ人=自由を愛する、愛国心が強い、ヒーロー好き
イギリス人=皮肉っぽい、イギリス英語が英語の標準語と信じている、料理がまずい
フランス人=愛と芸術こそ人生、グルメ、自己主張が強い、デモ・ストライキ好き
ドイツ人=融通が効かない、堅物、真面目、ビール好き
イタリア人=女好き、ナンパ好き
ロシア人=常にウォッカを飲んでいる、スパイ

20年前の日本企業の立ち位置

昔、エスニックジョークを集めた本を読んだのですが、アメリカ人の素晴らしい一日といったような題のジョークがありました。うろ覚えですが以下のようなものでした。

アメリカ人の僕は朝起きると、サムスンのテレビを付けて日本のアニメを見る。
それが終わるとパパのトヨタでショッピングモールへ。パパは車を乗り換えたいらしい。本当はフェラーリやメルセデスに乗りたいが、ちょっと手が届かないなと笑っていた。カーラジオからはスポーツニュースが流れている。イチローがまたヒットを打ったらしい。
一通り買い物を済ませるとランチはフードコートでスシを食べる。クリスマスプレゼントにはプレイステーションが欲しいとパパにリクエストしておいた。
家に帰るとお兄ちゃんがカワサキのバイクでガールフレンドのところへ出かけるところだった。
午後にはカラテ教室に行き、夕飯は中華料理を食べた。
そして夕飯を食べてから寝るまでの間には任天堂のゲームで遊んだ。
夜、ベッドで横になりながら僕は思う。アメリカってなんて素晴らしい豊かな国なんだ。アメリカに生まれて本当に良かった。僕はアメリカを心から愛している。

まぁ、アメリカ人はアメリカって素晴らしいと思っているけど、内実、その生活は海外から入ってきたものばっかりじゃないかというジョークです。特に日本企業の名前が目立ちます。日本企業の製品はそれだけアメリカの豊かな生活に貢献してきたということです。

おそらくこのジョークは2000年代初頭のものでしょう。バブルが崩壊して、日本経済は失われた20年の真っ只中ではありましたが、生活の中にはそれまでの栄光の遺産が多く残っていた時代でした。

立場が逆転してしまった

20年経って、2020年、私たちの生活を見回して見るとアメリカの製品、サービスで埋め尽くされています。完全に立場が逆転してしまいました。

携帯電話はiPhone、そのiPhoneで見ているものはFacebookやInstagram、Youtubeです。オンラインショッピングはAmazonでしますし、オフィスでGoogleやMicrosoftの製品なしでは仕事は成り立ちません。クレジットカードはビザとマスターカードが7割近くを占めます。映画を見るときはNetflixやAmazon Primeで見ますし、なにか食事のデリバリーを注文するときはUber eatsで頼みます。

プラットフォームビジネスに乗り遅れた日本企業

昔はインターネットがなかったのでハードとプラットフォームは一体だったのではないかと思います。
車に乗るには当たり前ですが、車が必要です。トヨタは高性能で故障しにくく、比較的安価で世界中に通用するブランドを持っています。
昔、テレビや音楽プレーヤーはソニーが盤石な地位を誇っていました。トヨタと同じく、高性能で壊れにくい点がブランド力を高めていました。
日本企業は堅実にいいものを作ることで信頼性を増し、それがブランド力の源泉でした。

インターネットが登場すると、プラットフォームビジネスが席巻します。パソコンやインターネット回線そのものよりもそれを使って提供するサービスがビジネスの主役になってきます。MicrosoftやGoogleは今まで存在しなかったビジネスモデルで一躍、アメリカを代表する企業に急成長しました。
ハードのビジネスは薄利多売、しかも技術の進歩で安いものでも壊れにくくなり、壊れにくいという信頼性だけではブランドを維持できなくなります。
しかもそこにスマートフォンという今までの携帯電話の常識を覆す新しい製品が誕生しました。残念ながら開発したのはソニーではなくアメリカのアップルでした。
スマホはプラットフォームビジネスに拍車をかけます。日本の企業で世界的なプラットフォームを開発できた企業はありませんでした。

私は日本が大好きです。世界一周をしたときに、日本の素晴らしさを嫌というほど実感しました。治安は世界で最もいいと言っても過言ではないですし、公共交通機関は常に時間に正確に動いています。国民皆保険で医療体制も充実しています。親切な人が多いですし、あらゆるサービスの質は最高です。東京のレストランは質・バリュエーション共に世界最高級だと思います。ただ、こと投資に関してはアメリカには勝てないかなと思っています。アメリカの多様性がもたらす創造力や技術革新力には残念ながら日本は敵わないと思います。


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