金利上昇でFRBはどう動く? マーケットの注目はFRBと決算へ

マーケットの注目はワシントンD.Cを離れ、FRBと決算発表へ

年明けから世界中で新型コロナウィルスの感染再拡大、アメリカでは連邦議会議事堂が襲撃され、トランプ大統領が再び弾劾されようとしています。年初からいろいろありすぎて、今年もすごい年になりそうな予感がしています。

アメリカの一般国民の関心事はトランプ大統領の罷免や弾劾は実現するのかに集まっていますが、今後のマーケットについて考えるのであれば、政治からは離れて、FRB(連邦準備制度理事会)と決算発表に関心を移した方がいいと思います。

正直、残り任期1週間のトランプ大統領が罷免もしくは弾劾されるかどうかというのは、マーケットに対する影響はほぼないと思います。少しきつい言い方をすれば、トランプ大統領はすでに過去の人です。
20日になれば大統領はバイデン氏に代わります。バイデン氏がどういった政策を打ち出すか(特に財政出動)は気にしていたほうがいいかもしれませんが、投資家はワシントンDCよりもFRBの動きと2020年Q4(10-12月期)決算のゆくえに注目するべきだと思います。

年明けから金利上昇

年明けからアメリカ10年債利回りは上昇し、1%を超える水準で推移しています。

年明けのジョージア州の上院決選投票で民主党が勝利し、民主党主導の政権と議会によって国債増発や積極的な財政出動が進むとの考えから国債が売られ、金利が上昇しているとされています。

ただ、今のところ金利上昇による株価への影響は限定的です。長期金利の上昇とともに期待インフレ率も上昇しているからです。

⬆️はマーケットの期待インフレ率を示す10年物ブレークイーブンインフレ率の推移です。
昨年のFRBによる金融緩和以降、スルスルと上昇してきました。昨夏にはパウエル議長は期間平均で2%のインフレ率を目指すとし、一時的にインフレ率が2%を超えることを容認する姿勢を示しました。さらに年明け以降、一段高になっています。

出典:Federal Reserve Bank of St. Louis FRED

こちらは実質金利の推移のチャートです。

実質金利=名目金利ー期待インフレ率

このような計算式で実質金利は算出されます。
実質金利が-0.9%なので、期待インフレ率を勘案すると金利は実質的にはいまだマイナス水準だということです。

注目してほしいのは実質金利のチャートです。多少の上下はありますが、昨年8月以降、横ばいで、年始の上昇もそのレンジの中にとどまっています。

名目金利である10年債利回りが上昇しているにも関わらず、実質金利は変動していないということは、年始からの債権利回り上昇は期待インフレ率上昇による金利の上昇だということです。

上の実質金利の計算式は
名目金利=実質金利+期待インフレ率
と書き換えることができます。

名目上の金利は上昇していますが、それは市場が将来の物価上昇を織り込んでのものであって、実質の金利はほとんど動いていないということです。

実質金利が動いていないので、今のところ10年債利回りが上昇しても株価への影響はほとんどないということになります。

現在、アメリカの株価は割高だという声が一部にあります。バブルを危惧する声もありますが、そういった懸念への反論のいちばんの拠り所は低金利です。
2019年実績EPSをもとにしたS&P500のPERは約23倍、2020年の予想EPSでのPERは約28倍です。株式益回りにすると実績EPSでは4.3%、予想EPSでは3.6%です。

名目で1%程度、実質では-1%の金利水準と、実績益回り4.3%、予想益回り3.6%の株価水準を比較すれば、株価が極端に割高とは言えないということです。低金利がPER上昇=株式益回り低下を正当化しています。

逆に、今後も債権利回り(名目金利)上昇が続いて実質金利が上昇に転じると、株価には割高感が出てきて株価下落圧力が強まるということになります。

FRBはどう動く?

ではFRBはどう動くか、とい点が今後の重要な焦点になってくると思います。

年末に一部のFRB理事から2021年末から22年にかけての国債買い入れ縮小を示唆する発言がありました。
パウエル議長がその見方に同調するかという点に注目が集まりますが、私は同調しないと思います。

12月の雇用統計の非農業部門の新規雇用者数は4月以来のマイナスになりました。
パウエル議長が金融緩和を続ける最大の目的のひとつは雇用の安定です。昨年8月のインフレ率2%超え容認の発言には雇用安定実現への堅い意思が感じられます。雇用環境安定のためなら多少のインフレ・景気過熱も容認するという決意です。雇用環境が悪化している現状で金融緩和の姿勢を崩すとは思えません。

1月14日にはパウエル議長が講演を予定しています。そして1月26、27日には金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれます。さらに1月14日以降、2020年Q4(10-12月期)の決算発表が本格化します。

マーケットの注目はFRBと決算に注がれています。


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