MMT(現代貨幣理論)は異端の理論なのか?

最近、MMT(Modern Monetary Theory 現代貨幣理論)という経済理論がよく話題になります。
コロナ以前からちょこちょこ耳にしていましたが、コロナの休業要請期間中、通貨をバンバン刷って休業要請している間の補償金を渡すべきだなどという意見をよく耳にしました。

以前から興味を持っていたので本を買っていたのですが、先日、ようやく読み終わりました。500ページを越す厚い本で読むのに少し時間がかかりましたが、MMTを理解するにはいい本だと思うので(MMTに賛同するか否かは別として)ご紹介したいと思います。

MMTとは?

  • 国家の財政は租税による収入で賄われているというのは大きな間違えだ
  • 租税は国民に強制的に国家に対する負債を負わせることで通貨の需要を創出し、通貨を保証する役割を担う
  • 租税は市中の通貨発行量を減らす調整弁の役割もある
  • 通貨発行権のある国家は通貨を発行できるのだから経済破綻することはありえない
  • インフレ率が容認できるレベルであれば政府は通貨をどんどん発行して完全雇用と物価安定のために支出すべき

まとめるとこんなかんじでしょうか。
詳しく見ていこうと思います。

なぜあなたは日本円を使うのか?

以前、お金はみんながお金と思って受け取ってくれるからお金なんだという考え方をご紹介しましたが、MMTでは少し違います。

MMTでは租税が通貨の需要を創り出し、通貨を保証する役割を担います。
みなさんは何も悪いことをしていない(つまり罰金ではない)のにある日、役所から税金の支払通知書が自宅に届きます。通知書には今年のあなたの税金は〇〇円です、○月○日までに支払ってくださいと書かれています。支払わなければ逮捕され、処罰されますので、みなさんは日本であれば日本円を手に入れて税金を支払わなければなりません。税金を払うために皆が日本円を求めて働いたり、物を売ったりします。これが通貨の需要を創り出す、ということです。日本円を手に入れれば政府が税金として受け取ってくれると皆が知っているので、何か物を買うとき、売っている人は日本円を受け取って商品を提供してくれるわけです。これが通貨を保証するという役割です。

国家は財政破綻しない

個人であれば、見境なく借金を重ね浪費すれば、いずれは借金が返せなくなり自己破産に追い込まれます。
MMTでは通貨発行権を有する国家は個人と違っていくら借金を重ねたところでそのような事態にはならないと説きます。
理由は単純で、お金を刷って借金を返せばいいからです。あなたは借金の返済に困ったときに通貨を発行することはできないので働いたり、何かを売って稼がなくてはなりませんが、日本政府は輪転機を回してお札を印刷してそれを借金の返済に回せばいいという論理です。

インフレにならない?

MMTは主流の経済学者には異端と見られてしばしば批判されています。
昨年にはジャネット・イエレン前FRB議長やウォーレン・バフェット氏が批判し、支持しない立場を表明していました。

最もよくある批判は、そんなに無節操に通貨を発行したらインフレになってしまうという批判です。
通貨を発行すれば市内の通貨量は増加するので、自然とお金の価値は下がり、物価は上がります。借金を返すために通貨発行量をどんどん増やしていったら、インフレに陥って通貨の価値が暴落してしまい、通貨に対する信用が失われてしまうという批判です。

私見

私は、MMTは一部賛同できる部分があると思いますが、全面的には賛同できないかなと思います。
景気後退期には国は借金を増やしてでも、お札をバンバン刷ってでも支出し、雇用の安定を図るべきだと思います。

一方で、景気回復期、好況期に借金やお札を刷って完全雇用を目指す必要はないと思います。経済が好調なときにそれを行ってしまうと、いざ景気後退だとなったときに通貨の価値が下落して物価上昇、などという事態に陥りかねません。『MMT 現代貨幣理論入門』にはインフレにはならないと書かれていますが、私はその根拠が薄いように感じました。ハイパーインフレは今までもまれにしか起こらなかったのだから、そう簡単に起こるものではないという主張は根拠として薄いかなと思います。

とそこまで考えたとき、一部賛同するという考え方はすでに政策として採用されている考え方です。アメリカでは現在、FRBがほぼ無制限に債権を買い取って市場にお金を供給しています。日銀に至っては株式まで買っています(私は中央銀行が株式を買うことは禁じ手だと思っています)。

景気後退時に市場に流動性(お金)を供給するということはジョン・メイナード・ケインズが1930年代の世界恐慌後に唱えてニューディールで実際に採用された考え方で、現在でもその考え方は財政・金融政策に生かされています。

そう考えるとMMTはある意味極端な考え方なので、完全に賛同すると振り切らない限り新しい考え方にはなりえないし、全面的に賛同しない限り、賛同にはならないのかなと思います。