『テスラ株を保有しないリスクは保有リスクより高い』は個人投資家には当てはまらない

テスラ株を保有しないリスクは保有リスクより高い by モルガン・スタンレー

先日、ブルームバーグに『テスラ株、保有しないリスクは保有リスクより高い-モルガンS』という記事が掲載されていました。

この記事を読んで、やっぱりテスラ(TSLA)買わなきゃと思ったあなた、ちょっと待ってください。
あなたに『テスラ株を保有しないリスク』って本当にあるんでしょうか?

私はほとんどの個人投資家には、『いますぐにテスラに投資しなくてはならないリスク』というものはないと思います。

『テスラ株に投資しないリスク』は個人投資家には当てはまらない

まず、はっきりさせておきたいのは、私はテスラの将来についてポジティブな意見を持っています。
ブルームバーグの記事にもあるようにアメリカ政府は国内を走る自動車のEV化実現に向けて大きく舵を切ろうとしています。バイデン政権は巨額の公共投資をして、EV化への大規模なインフラ整備を計画しています。

以前も記事にしたことがありますが、テスラにはEVメーカーとしての技術において一日の長があると思いますし、ブランド力も年々強くなってきていると思います。
テスラには車を生産して販売する一自動車メーカーとしての成功だけでなく、アップルのように製品周辺を取り巻くサービスを組み合わせることでエコシステムを構築し、大きな収益をあげられる会社になる可能性があります。

にも関わらず、なぜ『テスラ株に投資しないリスク』が個人投資家にはないと思うのか。
それは個人投資家には通常、機関投資家のように一定程度のパフォーマンスを第三者に保証する必要がないからです。

機関投資家は第三者(顧客)の資産を預かって運用を行っています。
もしこの先、テスラの株価が爆上げしたときに保有していなかったら、「なぜテスラに投資していないんだ!?」と顧客から突き上げられます。最悪の場合、解約されて預かっている資産が逃げていく事態になりかねません。これが機関投資家にとっての『保有していないリスク』です。

一方、自分の資産を運用している個人投資家には爆上げしたテスラに投資していなくても、そのことを問い詰めてくる顧客もいませんし、自分の運用資産が逃げていくなんてことは起こりえません。せいぜい「テスラに投資しておけば〇〇万円儲けが出ていたはずなのに・・・」と自分で後悔する程度でしょう。

ブルームバーグの記事のなかでモルガン・スタンレーが『テスラ株を保有していなければ大損のリスクがある』と述べている文章の主語は『自動車セクターの投資家』です。英語の原文を見てみると、『investors in the auto sector』となっています。

『自動車セクターの投資家』ってかなりざっくりとした言葉です。文字通りに受け取れば、自動車セクターの銘柄を一つでも持っていれば『自動車セクターの投資家』と言えるでしょう。
このざっくりとした主語はモルガン・スタンレーがポジショントークをするためにあえて曖昧にしているのかどうかは分かりませんが、記事を読んだ個人投資家の中には「ならばテスラ早く買わないと!」と焦って買いに走る人もいるでしょう。それがレポートの本当の狙いでは?と、ついうがった見方をしたくなります。

モルガン・スタンレーのレポートを書いた人がどのような投資家を意図して『自動車セクターの投資家はテスラに投資しないと大損するリスクがある』と書いたのか私には分かりませんが、私にはここに個人投資家が含まれるとは思えません。

『投資しないリスク』が小さいというのは個人投資家の強み

では、『投資しないリスク』というのが個人投資家にまったくないかというとそうではないと思います。

私が現在株式投資をしている最も大きな理由は、資産すべてをキャッシュで持っていることにリスクがあると思っているからです。
ネット銀行の比較的高めの定期預金でも金利はせいぜい0.3%程度です。70歳前後で引退するとして、それまでの約40年間、年率0.3%で運用しても資産はほぼ増えません。年率0.3%で40年運用すると、複利を使っても10%強のトータルリターンしか期待できません。
一方、株式投資をすれば、保守的に見積もっても年率3%のリターンは期待できます。年率3%で40年運用すればトータルリターンは200%を超えます。40年後には資産は3倍以上になっています。10%と200%のこの差こそ個人投資家にとっての『投資しないリスク』です。

しかし、テスラという1つの個別銘柄に投資しないリスクはほとんどの個人投資家にとっては無視してもいいようなリスクです。

もしどうしてもそのリスクを無視できないという方はS&P 500連動の投資信託を買えばいいでしょう。
昨年、テスラはS&P 500の構成銘柄に採用されました。S&P 500は時価総額加重平均型の指数なので、各銘柄の投資ウェイトは時価総額に準じます。テスラは現在、500社中7番目に時価総額が大きな会社で、ウェイトは1.67%です。
もしS&P 500連動の投資信託に100万円を投資したとすると、16,700円相当を自動的にテスラに投資することになります。

『投資しないリスク』が小さいというのは個人投資家の大きな強みだと思います。
テスラは非常に魅力的な会社だと思いますが、個人投資家の強みを生かして今の株価水準で投資することはせず、魅力的な価格になるのをじっと待とうと思います。


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