株式投資には過剰な楽観も悲観も禁物 S&P500の現在地

年初来のパフォーマンスが冴えない株式市場

年初来、株式市場はパフォーマンスが冴えません。

1月末に一旦底打ちしたように見えましたが、足元で再び1月末の水準まで下げてきています。

株式市場が冴えない理由は主に2つあります。

  1. ウクライナ情勢の緊迫化
  2. FRBによる金融引き締め警戒感への高まり

最近はよく①の理由で株価が下落しました、とニュースで解説されることが多いように感じますが、個人的には②の要素のほうがアメリカの株式市場への影響は大きいと思います。

現在、アメリカのFRBが定めているフェデラルファンドレートは0〜0.25%です。一方で1月の消費者物価指数(CPI)は7.5%でした。

インフレ率が7%台であるにもかかわらず、政策金利が0.25%というのは異常事態です。インフレがどんどん進行しているのにも関わらず、金融緩和策の遺産の低金利はそのまま放置されてしまっている状態です。

市場では2022年末時点で1.50〜1.75%の水準までの金利上昇がコンセンサスになっています。1回のFOMCにつき、0.25%金利を引き上げるとすると、年内に6回の金利引き上げを市場は織り込んでいるということになります。

S&P500のPERは19倍台に

私は月に1度、S&P500のファンダメンタルズを確認するようにしています。

2月18日付けのファクトセットのレポートによると、2022年のS&P500のコンセンサス予想EPSは225.47ドルということになっています。

出典:ファクトセット

年が明けたので2023年の予想EPSも表示されるようになりました。

先週末のS&P500の終値は4,348.87だったので、それぞれのPERは以下のようになります。

確定値がまだ出ていないので、2021年は予想となっていますが、こちらの数字は確定値に限りなく近い数字と見ていいと思います。

2023年の予想PERは17倍台!割安!と飛び乗るのは少し危険です。
株式市場は2022年のインフレ上昇と金利の急上昇が起こった場合のリセッション(景気後退)リスクに怯えて株価が下落しているわけですが、そのリスクが247.93ドルという予想EPSには十分に織り込まれていないからです。

リセッションに陥れば、247ドルというEPSは絵に描いた餅になってしまいます。

ただ、リスクが大きくなっている分、その可能性が実現した場合にはリターンも大きくなります。

2023年の予想EPSをもとにそれぞれのPER倍率で株価を逆算すると以下のようになります。

もし予想通りに2023年のEPSが247.93ドルに届いた場合、PER20倍で株価は4,958.60になります。現在の水準から14%のアップサイドが期待できるということになります。

目線を少し近づけて2022年の予想EPSをもとにそれぞれのPER倍率で株価を逆算すると以下のようになります。

今後も市場の不安が増大していき、PERが18倍まで下がると株価は4058.46まで下落するということになります。現在の株価水準から7%弱のダウンサイドがあるということになります。ただし、これは予想EPSが変化しないという条件がつきます。予想EPSが下がれば、株価のさらなる下落もあり得ます。

過剰な悲観も禁物

2023年の予想PERは17倍台!割安!と飛び乗るのは少し危険と言いましたが、逆に悲観的になりすぎるのもよくないと思います。

ツイッターなどを見ていると、『アメリカの株式市場はバブルだ!今から半値になる!』という過激な意見を目にすることがあります。

そういった意見のとおり、現在の株価の半値=2200までS&Pが下落するとします。

その場合、PERが過去平均の17倍台からさらに低い15倍とすると、EPSは2200÷15=146.67ドルということになります。これは実質的な実績値である2021年の208ドルから30%も低い水準まで落ちるということを意味します。

可能性はゼロではないでしょう。実際に2008年の金融危機の際にS&P500のEPSは前年比で-40%の水準まで急落しています。EPSの前年比30%減、40%減という現象は過去に起こったことのある現象です。

しかし、その可能性が高いかと言われると、現時点ではそこまで高いとは言えないと思いますが、この判断は個々のリスク許容度に拠る部分もあります。

半値になる!という声に感情的に怯えるのではなく、そのリスクは許容できるリスクなのかということを見極めることが大事なことだと思います。

ちなみに2008年に急落したEPSは2年後の2010年には急落前の2007年の水準を回復しています。リセッションのたびに株価が急落してもその後数年かけて回復し、基本的には右肩上がりで成長してきたのがアメリカの株式市場です。


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