アメリカ株下落の一因 上院での共和党と民主党対立激化

今週に入ってアメリカ市場では株価下落が進んでいます。

9日水曜日は一旦反発しましたが、昨日、再び下落しました。幅広い銘柄が下落し、S&P500で1.7%程度の下落でした。

アメリカ議会では追加経済対策が議題に

日本では来週、自民党の総裁選と新首相指名が控えているのでテレビのニュース報道は総裁選の話題が占めています。アメリカの話題といったら、トランプ大統領の言動のアップデートくらいでしょうか。

日本で大きくは報道されていませんが、アメリカでは9月に入り議会の夏休みが明けて追加の経済対策のゆくえに関心が集まっています。

アメリカ政府の会計年度は10月から始まります。日本政府の会計年度は4月から翌年3月までなので、政治の動きとしてはアメリカの9月は日本の3月に相当するでしょう。
議院内閣制の日本と大統領制のアメリカでは首相と大統領の予算編成への関与の度合いが異なります。日本では首相が予算委員会に出席して予算案の説明(予算案に直接関係ないことが追求されることも多いですが)を行いますが、アメリカの大統領が議会に出向いて予算案に関して答弁することはありません。アメリカでは基本的に予算の編成は議会の仕事です。

2020年度予算は9月まで、10月からは本来であれば21年度予算に切り替わるのですが、実は21年度予算は未成立で、今月中に成立する目処はありません。そのため、10月から大統領選後までのつなぎ予算を組むことが与野党で合意済みです。もし大統領選と議会選挙の結果、大統領と議会多数派がねじれたりするなどすると、議会が予算を通さず、政府機関の閉鎖という事態に陥る可能性もあります。アメリカの予算未成立による政府機関閉鎖はしばしば起こっていて、直近では2018年にトランプ政権と議会が対立して政府機関の閉鎖が起こっています。

追加経済対策をめぐる与野党の隔たり

トランプ大統領は再選のためになりふり構わないきらいがあります。
トランプ大統領の今までの行動からすると、経済のV字回復という実績づくりのために巨大なバラマキとも受け取れかねない追加経済対策を強引に進めそうな感じがします。それを野党民主党がそうはさせじと強硬に反対しているのかと思いがちですが、実際は逆です。

共和党は3000億ドルの追加経済対策案を提示しようとしていましたが、民主党がそれでは不十分だと反発し、昨日、上院での採決に向けた動議が否決されました。民主党は2兆ドル超の経済対策を対案として提示しています。桁がひとつ違うほど、両者の隔たりは大きいです。
しかも、共和党の財政保守派の議員の中には共和党案の3000億ドルの対策すらも財政負担が大きすぎるとして反対する声もあるという報道もありました。

良くも悪くも対立軸がはっきりしているアメリカの2大政党

元来、アメリカの2大政党は支持層、ポリシーがとてもはっきりと分かれています。

共和党

  • 小さな政府(低福祉低負担)志向
  • 市場での競争あってこそ真っ当な資本主義
  • 銃規制反対
  • 国民皆保険導入に反対
  • キリスト教保守派が支持

民主党

  • 大きな政府(高福祉高負担)志向
  • 市場での競争を制限しても富の再分配による格差是正が必要
  • 銃規制推進
  • 保険制度の充実を推進
  • 労働組合が支持

今回の追加経済対策の対立も両党の基本的な立ち位置に由来しています。
共和党は小さな政府志向ですから政府による大規模な経済対策には消極的、逆に民主党は大きな政府志向なので共和党の案では不十分だとして対立しています。

アメリカの2大政党は両党の立ち位置がはっきりと分かれていて、ある意味わかりやすいです。
日本ではかつて2大政党制を目指す動きがあり、民主党政権の誕生で2大政党制が実現したかに見えましたが、民主党政権の失敗もあって結局根付きませんでした。結果的に自民党一強体制が近年続いています。日本で2大政党制が根付かない理由は民主党の失敗もありますが、与野党の立ち位置がはっきりと分かれなかったことにあると思います。
自民党は保守政党と呼ばれてはいますが、政策の幅はかなり広い政党です。
特に経済政策は幅が広いです。アメリカの民主党左派の一部議員が提唱しているMMT(現代貨幣理論)を自民党の一部議員が提唱しています。また、国民健康保険の制度は自民党政権下で誕生しました。どちらもアメリカの共和党では絶対にありえないでしょう。

一方、最近のアメリカを見ていると政治的な立ち位置の対立が激化し国を分断する事態になっているように見えます。そういった意味では2大政党制は根付かなかったけれど平和な日本のほうがいいのかなと思うこともあります。

追加経済対策と今後のアメリカ株相場

11月のアメリカの選挙は大統領選が大注目されていますが、議会選挙も同時に行われます。3000億ドルの経済対策の動議は否決されましたが、今後は与野党で協議することになると思います。両党とも相手側から譲歩を得ることで11月の選挙で実績としてアピールしたいところなので、交渉は難航するでしょう。選挙までに両党が合意できず、経済対策が廃案になる事態に陥る可能性もあります。そうすればさらなる株価下落の材料になると思います。逆に成立すればポジティブな材料になると思いますが、簡単なことではないと思います。


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