GAFAのリスク 国民感情の火と政策決定

ふたたび非常事態宣言発令の日本

菅総理大臣は非常事態宣言をふたたび発令する方針を決定したようです。

客観的に数字だけを見ると日本の感染状況は欧米と比較すると突出して悪いわけではありません。
⬇️は各国の人口100万人あたりの感染者数の推移のグラフです。

出典:札幌医科大学HPより

日本は検査数が少なく、多くの感染者を捕捉しきれていないので感染者数で比較するのは無意味だという意見もあります。

出典:札幌医科大学HPより

しかし検査数を抑えてもコントロールできない死者数を比較してみても状況が欧米ほど深刻ではないと言えると思います。
医療体制や医療保険制度など根本的な医療システムによる影響もあると思いますし、医療関係者や保健所の努力によって死者者数が抑えられているということもあるでしょう。ただ、単純に数字だけを比較すると日本の状況は欧米よりはマシと言えると思います。

もちろん、医療現場は逼迫していますし、楽観すべきではありません。昨年、いち早く海外からの旅客を制限して国内での感染をほぼ完全に抑え込んだ台湾と比較すると状況は圧倒的に悪いことに変わりはありません。2020年1月、2月の初動が明暗を分けたということは間違いないと思います。

発足当初は高支持率を誇った菅内閣もここに来て支持率が急落しています。

日本政府のコロナ対応は大いに批判されるべきものがあるとは思いますが、支持率急落には国民の感情的な不満も大いに影響を与えていると思います。

たとえば首相の会食問題です。
総理大臣自らが5人以上での会食を行っていたことが明らかとなり、問題視されました。
大人数での会食自粛を呼びかけていた張本人が大人数で会食を行っていたのは指導者としてどうかと個人的には思いますが、非常にプラグマティックに突き詰めて考えれば、現状の日本では感染拡大局面とはいえ大人数で会食することは違法行為ではありませんし、首相に対するコロナの健康リスクは一般人と比較すれば低いです。結果的に会食で感染した人はいなかったわけですから、結果論で言えば問題なかったという見方もあるかもしれません。

昨年10月にアメリカのトランプ大統領が感染したときの回復までの一連の流れは、大統領と一般の人との間のコロナに対するリスク許容度の違いが顕在化したと思います。
トランプ大統領は感染判明後数日で退院し、翌週には職務に復帰しました。治療には最新の機器や医薬品が使われ、住居であるホワイトハウスには24時間体制で医師が常駐しています。何かあれば即時にヘリコプターで病院に搬送できる体制も整っています。同じ処置・待遇を一般の人が受けるのは不可能に近いでしょう。

大統領や首相と一般の人とのコロナに対する健康リスクは異なります。それは立場上、ある程度は仕方のないことですが、それが表立って顕在化すると国民感情としては「許せない!」という感情が沸き起こってきてしまいます。

民主主義国家である以上、政治家は世論を無視できません。結果的に国民感情(単純に言うと「〇〇だけずるい!」や「許せない!」という感情)は政策決定に大きな影響をもたらすことがあります。

国民感情こそGAFAのリスク

昨日、ジョージア州の上院議員選挙の結果によってはアメリカの巨大ハイテク企業に対する規制強化が加速する可能性があると記事にしました。

こちらはこのブログで何度か引用していますが、フェイスブック(FB)の2020年Q2決算資料です。
2020年Q2にフェイスブックは約60億ドルの営業利益がありましたが、そこから支払った税金は約9億5000万ドルで、実効税率は16%です。

この巨額の利益と実効税率の低さが巨大ハイテク企業への「許せない!」という国民感情の源泉となっています。

論理的に考えれば、では大企業への税負担をあげようという話で済むはずですが、国民感情に火がつけば、「こんな巨額の利益をあげること自体許せない、巨大ハイテク企業は事業分割すべきだ!」という話になってしまいます。

アメリカの巨大ハイテク企業は中国のハイテク企業と国際競争しているので、アメリカのハイテク企業の弱体化は中国を利することになり、結果的にアメリカの国益を損なう恐れもあります。
私は巨大ハイテク企業はもっと税金を払うべきだとは思いますが、一方で事業分割はアメリカの国益を損ねる可能性もあり、さらに経済的民主主義に反するもので起こる可能性は高くないと思います。

ただ、もし何かのきっかけで巨大ハイテク企業に対する怒りの国民感情に火がつけば、事業分割まで振り切ってしまう可能性もゼロではありません。

私はそのリスクを負担することで将来、リターンを得られると思っているからこれらの企業の株に投資しているわけですが、事業分割の可能性はまったくゼロというわけではないと思っています。

今回の上院選で民主党が勝利し、結果的に大統領と上下両院を民主党が押さえるいわゆる『トリプルブルー』が実現したとしても、すぐに巨大ハイテク企業の分割の話が進むわけではありませんが、流れを作る要因のひとつになる可能性はあります。