資本論ノススメ 会社員投資家こそ読むべき本

以前、社会人1年目の会社の後輩に「社会人として何かおすすめの本ありますか?」と聞かれたのでカール・マルクスの『資本論』を勧めました。会社員として今後、資本主義社会で賃金もらいながら働くのであれば読んでおいて損はないと思うよと。

まず断っておきますが、私はべつに共産党員ではありません(共産党員は株式投資なんかしないか)。マルクス主義者でもありません。『資本論』に書いてあることすべてが正しいとは思っていませんが、読む価値はある本だと思っています。

資本主義のしくみ

マルクスの本=共産主義、マルクス主義の本と誤解されている方がいます。
『資本論』のドイツ語の原題は”Das Kapital”、英語に直訳すると”The Capital”、つまり『資本』です。この本は共産主義について論じている本ではなく、資本主義社会のしくみを説いた本です。

資本主義社会での富の創造

ある会社が椅子を販売するとしましょう。椅子の材料は全部で500円です。500円で仕入れた材料を工場で組み立ててお店で5,000円で販売すると4,500円が会社の売上になります。では、なぜ500円の部品を組み立てたものが5,000円で売れるのでしょうか?売上の4,500円はどこから生まれてくるのでしょうか?

マルクスはあらゆる富の源泉は労働だと言います。会社の従業員が500円の部品を組み立てて椅子という商品にし、それをお店に運んでお客さんに売ったから5,000円で売れた、4,500円の富がこの世に創造されたのだという論理です。部品を組み立てる、それを運ぶ、お客さんに売って梱包し代金をもらう、といった労働が4,500円の儲け(富)を生んだのだということです。

賃金=労働の対価ではない

上の椅子の例でわかりやすくするため、1つの椅子を売るために3人の人がそれぞれ1時間ずつ、組み立てる、運ぶ、売るという労働をしたとします。しかし、資本主義社会では4,500円を生み出した3人の賃金=生み出された富(4500円)にはなりません。雇われている人たちは時給1,000円だったりするわけです。すると3人の給与は計3,000円です。残りの1,500円はどこに行ってしまうかというと、会社つまり資本家の儲けになります。

では、労働者の時給1,000円という給与額はどのように設定されたのでしょうか?
よく日本では賃金=労働の対価と言われることがありますが、マルクスは賃金=労働の再生産費であると主張しています。つまり、労働者が1日働いて、家に帰り、食事をして睡眠をとって、翌日また元気に仕事に来てもらうための費用だということです。だからその労働者が創造した価値よりも賃金は低いのです。資本主義社会では労働者は資本家に搾取される存在だということです。

搾取された富の行方

では労働者から搾取された富はどこにいくのでしょうか?
資本家は儲かってくると事業の拡大を図ることが往々にしてありますが、それこそが搾取された富の行方です。つまり投資です。資本家は労働者から搾取した富を投資(例えば新しい工場を建てる、店舗を建てる、新たに従業員を雇うなど)をし、さらに儲けを大きくしようとします。大きくなった儲けでさらに投資をする、というように終わりなく投資をし続けて儲けを大きくしようとします。
もしくは、資本家のポケットに入ります。一番わかりやすいのは株式の配当です。儲けが資本家である株主に分配されます。使い道は株主の自由です。

共産主義は失敗だった

マルクスは資本主義の行末として労働者が団結し、革命が起こると結論付けています。そしてそれは20世紀にロシアや中国などで実際に起こりました。結末はみなさんご存知の通りです。ソビエトは崩壊し、中国は政治的には共産党が残っていますが、経済的には完全な資本主義国になりました。ある意味、共産主義は壮大な社会実験でしたが大失敗に終わりました。

一方、資本主義側の国々の指導者たちは『資本論』を読んで、労働者を邪険に扱うと革命を起こされるかもしれないという危機感を持ち、労働者を保護する施策を講じます。日本は高度経済成長の時代を経て、結果的に「世界一成功した社会主義国」と言われるほど労働者保護に手厚い国として繁栄を手にすることができました。

しかし、ソ連の崩壊で共産主義が大失敗に終わると資本主義への革命のプレッシャーがなくなります。新自由主義の名の下に格差が広がり、マルクスが指摘した資本主義社会の欠陥は21世紀に入ってからますます顕著になっています。

労働者は搾取される存在だからこそ資本家を目指しましょう

私が1960年代にもし『資本論』を読んでいたら、マルクスが行っているように革命の道を目指したかもしれません。しかし、共産主義の結論がわかっている21世紀で革命を目指しても報われないでしょう。であるならば、資本家を目指せばいいのではないかというのが私のこの本を読んだ結論です。

『資本論』を読むにあたって

『資本論』を読むにあたって、いきなり原著を読んでもいいのですが、私は解説書から読むことをお勧めします。理由は原著の最初を読めばわかると思います。

資本制生産様式が君臨する社会では、社会の富は「巨大な商品の集合体」の姿をとって現われ、ひとつひとつの商品はその富の要素形態として現われる。したがってわれわれの研究は商品の分析から始まる。

高校生からわかる「資本論」 池上彰 著

最初読んだとき、わけがわかりませんでした。こんな調子でこんな文体が続いていきますので解説書から始めた方がいいと思います。私は以下、2冊を読んだのでお勧めしたいと思います。

『高校生からわかる「資本論」』の方が題名のとおり、わかりやすく噛み砕かれていると思います。