日本人の貯蓄礼讃の功罪

米小売売上高が予想を上回る

16日、アメリカ商務省が9月の小売売上高を発表しました。前月比1.9%増と市場予想の0.7%増を上回りました。

これで5月以降、5ヶ月連続で前月比プラスを記録しました。アメリカ経済は予断を許す状況ではないものの、回復基調にあるということだと思います。
アメリカでは日本より厳格なロックダウンが実施されるなど、新型コロナウィルスの社会・経済への影響は日本よりも大きいように見えますが、そんな中でもお金があるところにはあって、使う人はしっかり使っているんだなと思いました。

日本の貯蓄礼讃文化

日本の話になりますが、昨日10月17日は「貯蓄の日」だったそうです。
神戸新聞の記事によると、1952年に日本銀行が「お金を無駄遣いせずに大切にしよう」と定めたようで、もとは、収穫への感謝の気持ちを込めて10月17日に伊勢神宮で行われる神嘗祭(かんなめさい)に由来するそうです。収穫祭と貯蓄励行を結びつけるのは少し強引じゃないかなと思わなくもないですが、これに限らず日本は「お金を無駄遣いせずに大切に貯蓄しよう」という貯蓄礼讃の風潮が根強い国です。。

数年前ですが、『一日江戸人』という本を読んだことがあります。題名そのまま、江戸の人々の暮らしを紹介したエッセイで、読みやすくて非常に面白い本でした。

この本の中で、「江戸っ子は宵越しの銭を持たない」という慣用句が紹介されていました。つまり、江戸っ子はその日稼いだ金はその日のうちに使ってしまうという意味なんですが、あながち嘘ではなかったようです。まったく貯金をしなかったわけではないみたいですが、江戸の町人はお金のあるときにはパァーっと気前よく使ってしまう人が多かったようです。

そんな話も今は昔、1952年には「お金を無駄遣いせずに大切にしよう」という考えを浸透させる目的で「貯蓄の日」なる記念日を日銀が制定するに至った日本ですが、貯蓄礼讃は功罪あると思います。

功罪の功はもちろん、今回のコロナ危機のような経済危機で失業したり、給料が減ってしまったときに貯蓄があればすぐに困らないという点です。
コロナ前の昨年ですが、アメリカのシカゴに行く機会がありました。シカゴは東京のような大都市ですが、都心のダウンタウンの路上で物乞いをしているホームレスの人たちが多く目につきました。私が小学生くらいの90年代終わり頃は東京でも路上でよくホームレスの人を見かけた記憶がありますが、あの頃から比べると現在はかなり減ったような気がします。安く夜を明かすことができるネットカフェなどの存在があるからかもしれませんし、統計を見たわけでもないので断定はできませんが、肌感覚ではアメリカよりも日本の方がホームレスは少ない気がします。失業率も日本の方が低いので一概には比べられませんが、もしかすると貯蓄礼讃教育のひとつの効果かもしれません。

一方、罪もあります。人々の財布のヒモがそれだけ硬くなってしまう可能性があるということです。
バブル崩壊後、20年に渡ってデフレが長引いてしまった大きな要因のひとつに消費の低迷があると思います。

出典:https://www.murc.jp/report/economy/analysis/research/tenbou_171106/

日本の実質消費支出は1993年まで右肩上がりでしたが、1993年を境に下落しています。
消費が落ち込む➡️企業の売上が減る➡️給与が減る・増えない➡️消費が落ち込む➡️・・・といういわゆるデフレスパイラルに20年に渡って日本は苦しめられました。
景気は気からと言いますが、日本人のお金に対する考え方が違っていたら、歴史は変わっていたかもしれません。

どちらがいいのかは簡単には言えないと思います。
浪費がいいとは思いませんが、お金を持っている人が使わなければ経済は成長しません。かと言ってアメリカのように常にカードローンの返済に追われている人が多く、景気後退が一旦起こると一気に多く人が破産状態に追い込まれる、というのも健全な社会ではない気がします。
お金の教育は簡単ではないと思いますが、型にはめて思考停止させてしまうのが一番良くないのかなと思います。