9月は1年でもっとも株価が下がりやすい
9月に入って株式相場はギクシャクしています。
理由としては、
- 中国の大手不動産ディベロッパー恒大集団の債務不履行問題
- 次のFOMC(公開市場委員会)の後、テーパリングのアナウンスがある可能性大
以上の二つが主に考えられています。
特に恒大集団の債務不履行問題は中国経済に波及して第2のリーマンショックを引き起こすなどという物騒な意見も聞かれます。
ただ、それ以前にアノマリー(経験則)として9月は1年のうちで株式相場の地合いがもっとも悪くなりやすい月です。

⬆️は以前も引用したことがありますが、1950年から2017年までの月ごとの平均リターンのグラフです。
マイナスなのは1年12ヶ月のうち、8月と9月のみで、9月がもっともリターンが悪い月になっています。
経験則なので、なぜなのかはよくわからないけどそうなる、といった類いのものですが侮れません。
多くの市場参加者がこの経験則を念頭に置いていれば、それだけで株価にバイアスがかかることになります。
中国の不動産市場がバブルだというのも、中国政府が不動産業界に対して締め付けを強化しているのも今に始まったことではありませんし、年内テーパリングや来年利上げの可能性は数ヶ月前からすでに高まっていて、9月まではそれでも株価は上昇を続けていました。

急落したとニュースになるほどですが、それでも昨年の9月と比較すると30%以上、年始からでも17%以上高い水準です。
今回の調整でどこまで下がるか?
前回、このS&P500のファンダメンタルズの記事を書いたときは『どこまで上がるか?』と書きましたが、今回は『どこまで下がるか?』を考えてみたいと思います。
まず、9月時点でのS&P500のEPSのデータを見てみましょう。

⬆️は四半期ごとのEPSのデータです。
ネイビーが実績、グレーの部分がコンセンサス予想を意味します。
実際の決算発表はQ2(4-6月期)まで完了しています。
Q2の数字は確定していないので予想のままですが、ここから大きく変わることはないと思います。
やはり、21年Q2がひとまずはパンデミック以降の企業業績のピークになるようです。
コンセンサス予想では目先1年間は横ばいが続き、来年のQ2(4-6月期)以降に21年Q2の水準を上回ってくるとされています。
20年4月以降、アメリカの株式市場はほぼ右肩上がりに上昇してきました。
目先の1年間は厳しいものになる可能性をコンセンサス予想は示唆してると思います。

それでも年単位では、22年は21年に対して10%弱のEPS成長を市場は予想しています。
前回、7月の時点では2021年のコンセンサス予想EPSは191.36、2022年が213.21でしたので、いずれも上方修正されています。
9月21日のS&P500の終値は4,354.19でしたが、それぞれPERを算出すると以下のようになります。
予想EPS | 予想PER | 株式益回り | |
---|---|---|---|
2021年 | 201.43ドル | 21.62倍 | 4.63% |
2022年 | 219.80ドル | 19.81倍 | 5.05% |
9月に入ってから調整をしていますが、個人的にはまだまだ下がる余地はあるのかなと思います。
ただ、いつ反転してもおかしくない株価水準ではあります。
将来の株価のゆくえはわかりません。ランダムウォークな面もあります。
2021年の予想EPSをもとにそれぞれのPER倍率で株価を算出すると以下のようになります。
予想PER | 株価 | 株式益回り |
---|---|---|
18倍 | 3,625.74 | 5.56% |
19倍 | 3,827.17 | 5.26% |
20倍 | 4,028.60 | 5.00% |
21倍 | 4,230.03 | 4.76% |
22倍 | 4,431.46 | 4.55% |
もう2021年も残り3ヶ月ほどですので、2022年の予想EPSをもとに株価水準を考えてもいい時期だと思います。
2022年の予想EPSをもとにそれぞれのPER倍率で株価を算出すると以下のようになります。
予想PER | 株価 | 株式益回り |
---|---|---|
18倍 | 3,956.40 | 5.56% |
19倍 | 4,176.20 | 5.26% |
20倍 | 4.396.00 | 5.00% |
21倍 | 4,615.80 | 4.76% |
22倍 | 4,835.60 | 4.55% |
結論
今回の調整のS&P500の下値目処は2021年予想EPSベースで18倍に相当する3,625.74、一方の年末までの上値余地は2022年予想EPSベースで22倍に相当する4,835.60あたりだと思っています。
予想の幅が広すぎて予想になっていませんね(笑)。
明日の天気は晴れか曇りか雨か雪でしょうって言っているようなものです。
しかし株価ってそういうものだと思います。軽々に予想できるものではありません。
私には参考にしている経済アナリストや投資家が何人かいます。
彼らの今後のFRBの動きや経済の大勢の予測を参考にすることがありますが、株価予想は誰のものであろうと一切信じません。
どんなに百戦錬磨の投資家であろうが経済アナリストであろうが、株価の予測は一種の未来予測で不可能だと思っています。
最近のコメント