オラクルとウォルマートがTikTok買収か 次の標的はテンセント?

TikTokのアメリカ事業買収はオラクル&ウォルマートで決着か

最近、話題になっているTikTokのアメリカ事業売却先はオラクル(ORCL)とウォルマート(WMT)という流れで話が進んでいるとのことです。

事の発端はトランプ大統領が9月15日までにTikTokのアメリカでの事業の売却を決めなければ、アプリのアメリカ国内での使用を禁止するとTikTokの運営会社である中国のバイトダンスに通告したことです。

当初、マイクロソフト(MSFT)が売却先として有力という報道が出ましたが、今月に入ってバイトダンスはマイクロソフトの売却提案を拒否しました。マイクロソフト脱落の報道とともに名前が上がったのがオラクルでした。

ロイターの報道では、『TikTokグローバル』という新会社を設立し、取締役会の過半数と最高経営責任者(CEO)はアメリカ人が務めるということです。オラクルは新会社の株式の20%、ウォルマートも新会社の株式を取得し、マクミロンCEOが取締役に就任するということです。

事態はいまだに流動的で、トランプ大統領はマイクロソフトもいまだ交渉に関与していると話しています。

今回の買収交渉は非常に政治色が強い

通常、企業買収は売却元と買収先の2者の間での交渉となります。

以前、『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』という本を読んだとき、マイクロソフトがリンクトインを買収した際の買収交渉の流れが解説されていて、非常に面白かったです。決算書を読む際の参考になる情報があればと思って読んだ本でしたが、本題よりも企業買収の話題のほうが印象的でした。

通常、企業買収交渉には複数の売却先が交渉に上がります。買収交渉が報道されれば株価が動く、株価が動けば買収金額などの買収条件が変わっていくといったように日々、交渉が動いていきます。もちろんリアルタイムでは買収交渉は水面下で行われており報道されませんが、買収完了後に開示された交渉内容の報告書によってどのような交渉が行われていたのかが明らかになります。日々ダイナミックに動く交渉は手に汗握る展開で、まるで小説を読んでいるかのように一気に読んでしまった記憶があります。まさに事実は小説よりも奇なりです。

さて、そんな企業買収の交渉ですが、今回は通常の企業買収とは毛色が異なります。今回のTikTokのアメリカ事業買収には当事者だけでなく、アメリカ政府とおそらく中国政府が関わってくるからです。

私はオラクルって正直あまり知りませんでした。創業者のラリー・エリソンの名前ぐらいは聞いたことがありましたが、彼がトランプ大統領と個人的に親しく、トランプ支持を公言して従業員から抗議されていたことは知りませんでした。

私は企業が党派色の強い動きをすることは企業にあまりいい影響を与えないと思います。特に今、アメリカの世論はトランプ支持、不支持で二分されています。アメリカはロビー活動の盛んな国ですから大企業が大統領や議会とうまく関係を築くことは大事な営業活動の一部だとは思いますが、経営者が一方の支持者の支援を公言したり、政局に巻き込まれることは必ずしも会社の利益にならないと思います。まぁ、私の尊敬しているウォーレン・バフェットは民主党支持者で有名で、今回もバイデン支持を公言していますが。

今回、オラクルのエリソン会長がトランプ大統領との関係を利用して交渉を有利に進めたという証拠はありませんが、もし、今回の買収でオラクルが莫大な利益と急成長中のアプリビジネスを手にするとなると、世間では利益誘導があったのではと疑われても仕方がないかなと思いますし、長期でみるとそれは必ずしもオラクルの本業に対してポジティブには働かないのではないかと思ってしまいます。オラクルはそれを差し引いても元が取れるほど莫大な利益を得られる案件だと踏んでいるのかもしれませんが。

中国もひどい国家だと思うが、アメリカもなかなかだなと思う

私は世界一周の旅行中に中国に約1ヶ月間滞在したことがあります。当時は米中摩擦もなく、日本と中国との関係も2010年代初頭の最悪期を脱した時期であまり中国に行くことに対する抵抗感もありませんでした。
日本人だと分かった途端に入店を拒否されたとかいう話も噂程度に耳にしましたが、私が出会った中国の人たちは私が日本人だと伝えても「いつか日本に行ってみたい」とか「日本食は美味しいね」などと非常に友好的でした。Googleマップやフェイスブックに接続できなかったり、「天安門事件」と検索しようとすると検索結果が表示されなかったりして中国政府の闇の部分を感じることもありましたが、基本的には楽しい旅行でした。
私が中国での滞在を通して感じたことは中国人は悪い人たちではないが、中国政府はひどい国家だなということでした。当時、香港でのデモ活動が活発化してきた時期でしたし、東チベットに行った際には政府・警察による統制の強さは肌身で感じるものがありました。

中国は事実上の一党独裁で自由や権利に制限のある社会ですが、今回のTikTok買収のニュースをみると、アメリカもなかなかひどいことをするなと思います。
TikTokに続いてテンセントのゲーム事業でもアメリカ政府が国家安全保障上のリスクを指摘する動きがあるというニュースも報道されています。

もちろん、TikTokやテンセントが個人情報を収集して中国の諜報活動に利用されるのではないかというアメリカの危機感は理解できますが、かといって自由を標榜するアメリカ政府が事業売却を一方的に命令するというのは少し行き過ぎではないかと思ってしまいます。アメリカのCIAなどの過去の諜報活動(インテリジェンス)のことを調べるとなかなかひどいことを色々な国に対して行っているので、今に始まったことではないのかもしれませんが。