日米時価総額ランキング上位の企業を比較する
前回、いかに東京が住みやすいかと日本を持ち上げる記事を書いたので、今回は日本を憂う記事を書きたいと思います。
日米の時価総額トップ10を列記すると以下のようになります。
順位 | 会社名 | 時価総額 | 設立年月 |
---|---|---|---|
1 | アップル(AAPL) | 2兆1,770億ドル | 1976年4月 |
2 | マイクロソフト(MSFT) | 1兆9,570億ドル | 1975年4月 |
3 | アマゾン(AMZN) | 1兆7,070億ドル | 1994年7月 |
4 | アルファベット(GOOGL、GOOG) | 1兆6,640億ドル | 1998年9月 |
5 | フェイスブック(FB) | 9,549億ドル | 2004年2月 |
6 | バークシャー・ハサウェイ(BRK-A、BRK-B) | 6,483億ドル | 1839年 |
7 | テスラ(TSLA) | 6,177億ドル | 2003年7月 |
8 | ビザ(V) | 4,770億ドル | 1958年9月 |
9 | JPモルガン・チェース(JPM) | 6728億ドル | 1871年 |
10 | エヌビディア(NVDA) | 4,490億ドル | 1993年4月 |
バークシャーの設立が1839年というのは知りませんでした。
1960年代にウォーレン・バフェットが買収するまでは紡績会社でした。バフェットが買収後、投資会社へ事業転換を図り、現在は紡績事業から撤退しています。1960年代まではほとんど別の会社だったと言っていいと思います。
JPモルガン・チェースは2000年に複数の銀行による合併で誕生した会社です。1871年というのは前身のJPモルガンが設立された年です。
アメリカのトップ10はやはり若い会社が多いなという印象です。
2000年以降に設立された会社が2社、1990年以降に設立された会社が半数を占めます。
アップルやマイクロソフトは感覚的に新しい会社のイメージがありますが、このリストの中では古い方の部類に入ります。
一方、日本の時価総額トップ10は以下の通りです。
順位 | 会社名 | 時価総額 | 上場年月 |
---|---|---|---|
1 | トヨタ自動車 | 32兆3,820億円 | 1937年8月 |
2 | ソニーグループ | 13兆8,338億円 | 1946年5月 |
3 | ソフトバンクグループ | 13兆8,250億円 | 1981年9月 |
4 | キーエンス | 13兆7,874億円 | 1974年5月 |
5 | 日本電信電話(NTT) | 1兆1710億円 | 1985年4月 |
6 | リクルートホールディングス | 9,740億円 | 1963年8月 |
7 | ファーストリテイリング | 8,918億円 | 1963年5月 |
8 | 任天堂 | 8,553億円 | 1947年11月 |
9 | KDDI | 8,313億円 | 1984年6月 |
10 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 8,244億円 | 1919年 |
三菱UFJフィナンシャル・グループもJPモルガンと同様、合併によって現在の体制になったのは2005年です。1919年というのは前身の三菱銀行が設立された年です。
見比べる上で注意していただきたいのは、時価総額の単位がアメリカ企業のものはドル、日本企業のものは円だということです。
トヨタ自動車の32兆円というのはアメリカ10位のエヌビディアより小さい時価総額です。ただ、アメリカと日本では経済規模も人口も違いますので、この点を批判するのは安易すぎるかなと思います。
今回注目したいのは時価総額よりも企業の若さです。
日本のトップ10のうち、もっとも若い会社はNTTです。しかし、1985年というのはNTTが民営化された年で、厳密にはNTTの前身となる電電公社はそれ以前から存在していました。NTTに関しては1985年は厳密には設立の年とは言えないと思います。
NTTの次に若いのが1984年設立のKDDIですので、実質的にはKDDIがトップ10の中で一番若い会社と言えると思います。
ちなみにファーストリテイリングは設立こそ1963年ですが、1990年代までは地方のアパレル企業で、全国展開、海外展開を本格化させたのは90年代以降です。そういった意味では90年代以降に成長した若い会社と言えるかもしれません。
日米を比較すると、やはりアメリカの会社と比べて新陳代謝がないというか、新鮮味にかける印象は拭えません。
ソフトバンクグループやファーストリテイリングなどカリスマ経営者が率いる比較的新しい企業もあるので新陳代謝がまったくないとは思いませんが、アメリカと比較すると少し寂しい印象です。
トヨタ自動車やソニーなどは日本の高度経済成長を支えてきた尊敬されるべき会社だとは思いますが、90年代以降、これらの会社に肩を並べられるような新興企業が出てきていないのは残念なことです。
日本で新しい会社が大きく成長できない理由はいくつかあると思います。
中途半端に大きい国内マーケット
まず、国内マーケットが中途半端に大きいということが挙げられると思います。
韓国や台湾のように人口が1億人に満たない国では国内市場だけで大企業を維持する売上高を上げるのは無理があります。必然的に海外展開をしていかなくてはならなくなるわけですが、日本は人口が1億人を超える市場のため、国内を相手にして成功できれば、ある程度の売上高が見込めます。海外を意識する必要がなくなってしまうのです。
しかし、世界的な企業に発展するには日本の内需は十分な規模ではありません。ウォルマートやアリババなどアメリカや中国の内需企業が世界的にも大きな規模の会社に発展できるのは、それだけ国内市場が巨大だからです。
90年代から2000年代にかけての日本の携帯電話は高画質なカメラ機能など、魅力的な技術を兼ね備えていた革新的な製品だったと思います。現在では世界的に普及した絵文字という副産物も生み出しています。にも関わらず世界標準になれずガラパゴスケータイなどと言われるようになってしまった大きな原因は、売り手の企業が国内需要で満足してしまい、積極的に海外展開を図らなかったことにあると思います。
既存企業のムラ社会的性格
そして旧財閥などの企業グループや経団連、経済同友会などのムラ社会的性格です。
日本では出る杭は打たれるという言葉がありますが、まさにそうした経済風土が新しいビジネスの芽を摘んでしまっていると思います。
楽天の三木谷社長が既存の経済団体に反発して新経済連盟という新しい経済団体を設立していましたが、日本の旧態依然とした経済風土を変えていくのは一朝一夕にはなしえません。
日本には三菱や三井など旧財閥をベースにした企業グループがあります。単にグループ内で仲良くしましょう、というだけなら毒にはなりませんが、企業グループは株式持ち合いをしてお互いに便宜を図るというムラ社会的な性格が強いものです。
結果的に成長が止まってしまっている古い企業でも大きな会社の規模を維持したままいつまでもながらえるということが起きてしまいます。
古い会社では組織が硬直してしまい、そこからイノベーションを起こすというのは難しいように思います。
さらに社内のものの考え方が古いので、テレワークが進まないなど生産性を上げることの弊害にもつながっているようです。
日本は20年以上デフレと低成長に苦しみ続けて来ましたが、原因は日本社会の構造的な閉鎖性や硬直性など根深い問題があるように思います。
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