ソニーのEV参入のニュースは既存の自動車業界の終わりの始まりかも

ソニーがEV参入

ソニーがEV(電気自動車)へ参入すると正式に発表しました。新会社を設立して事業化に向けた検討を本格化するそうです。

昨年はEV業界を巡って大きな動きが多かった1年でした。
テスラ(TSLA)の株価が大きく跳ね上がり、IPOしたばかりのリビアン(RIVN)も株価が急騰し、一時は時価総額で1500億ドルを超え、フォルクスワーゲンを上回る水準まで上昇しました。

ソニーのほかにグーグルの親会社であるアルファベット(GOOGL)やアップル(AAPL)もEV参入が取り沙汰されています。

車は運転する空間からくつろぐ空間へ

自動車は今や動くスマホとも呼ばれるようになっています。

あなたが自動車を購入する際、重視する点はどのような点でしょうか?
燃費や運転のしやすさなどを重視する方は多いと思います。

今後、完全自動運転が実用化されれば、自動車の価値は運転性能などの輸送用機器としての性能よりも、いかにくつろげる空間を提供できるかという居住性に主眼が移っていくと思います。

ソニーのEV事業参入は、こういったくつろげる空間の提供に自信があるからだと思います。

完全自動運転が実用化されれば、運転手が車内に存在しなくなります。今まで運転に費やしていた時間を他のことに割けるようになります。

そうなると、やはりブランドコンテンツを有する企業にとっては絶好のビジネスチャンスになると思います。
具体的には、前述のソニーやディズニー(DIS)、ネットフリックス(NFLX)やアマゾン(AMZN)、アップル(AAPL)です。
フェイスブックやインスタグラム、YouTubeなどのプラットフォームを有する企業も有望かもしれません。

一方で、ハードのみを製造する企業にとっては厳しいビジネス環境になっていく可能性があります。ハードの性能面で差別化が難しくなっていき、ハードとしての自動車がコモディティ化してしまう可能性があるからです。

テレビやパソコンで起こったことが今後自動車業界に起こる可能性も

同じようなことが起こった前例として、テレビやパソコンが挙げられると思います。

2000年前後、日本メーカーのTVやパソコンは非常に強いブランド力を持っていました。

中学生だった私もソニーのVAIOに憧れた記憶があります。テレビではシャープの亀山工場で生産されていた液晶テレビが『世界の亀山モデル』として、もてはやされていました。

あれから20年ほど経ちましたが、パソコンやテレビは完全にコモディティ化してしまいました。
VAIOはソニーから切り離され、シャープはテレビの製造から撤退しています。シャープの場合はテレビ事業の不振が致命的となり、経営不振からの自力再建が叶わず台湾企業に買収されてしまいました。

アメリカ企業も例外ではありません。VAIOと同じ時期、ヒューレット・パッカード(HP)のパソコンが強いブランド力を背景に高いシェアを誇っていましたが、その後業績は低迷しました。

⬆️は過去のHPの株価の推移ですが、1999年の高値を回復したのは2020年のことです。

パソコンやテレビがコモディティ化していった一番の大きな理由は品質の面で差別化がしにくくなったということです。

『世界の亀山モデル』とメーカーが声高に叫んだところで、同程度の品質でより安価なテレビがあれば消費者はそちらに流れてしまいます。
テレビは綺麗に映ってある程度の耐久性があれば十分です。それ以上の付加価値をつけにくい状況で他社と差別化を図るには、価格を安くするしかありません。結果的に品質はほぼ横並びで価格競争をすることになり、コモディティ化していってしまいます。価格競争ではアメリカや日本のメーカーは韓国、中国や台湾のメーカーには敵いませんでした。

この先20年30年で自動車の世界でも同じことが起こる可能性は十分にあると思います。

ハードとしての自動車は各社品質にそこまで差がないということになると、ソフトの面で競争するしかありません。強いコンテンツを持つソニーやアップル、グーグルはそうなると有利でしょう。

ただ、高級車はハードの面だけでも差別化がしやすいかもしれません。
アップルのMac Bookが他社製品よりも価格が高いにもかかわらず売上を伸ばしているように、強いブランドを誇るメルセデスベンツやBMWなどの高級車は残っていくかもしれません。日本車だとレクサスは高級車として強いブランド力があるかと思います。

一方、その他のいわゆる大衆車はコモディティ化してソフト面で強いブランドを誇るコンテンツ企業の下請けになってしまう可能性があります。
実質的に自動車はハードよりもソフトのブランド力のほうが強くなり、アップル、グーグル、ソニーといったブランドの名の下に販売されるようになって、ハードのメーカーはあくまでもそれらのブランド向けにハードを製造して納入するといった地位に追いやられてしまう可能性があります。

ソニーのEV参入のニュースは既存の自動車業界にとって終わりの始まりを象徴するニュースになるかもしれません。


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