トランプ氏コロナ感染と雇用統計 今後の注目点は?

トランプ大統領が新型コロナウィルス感染

トランプ大統領が新型コロナウィルスに感染したというニュースが日本時間金曜日の昼すぎに入ってきました。後場の時間帯でしたが、速報を受けて日経平均、為替、アメリカの指数先物は総じて崩れる展開になりました。

アメリカ大統領の影響力ってすごいなぁと思わず感心してしまう崩れっぷりでした。イギリスや中東の王国と違って大統領制のアメリカは国家元首の大統領であっても国民のひとりです。アメリカでは3万人から5万人程度の新規感染者が毎日確認されています。ましてやトランプ氏は選挙運動で全国を飛び回っていますから、感染するリスクは一般の人よりも高かったことでしょう。一人の国民が感染しただけの話ですが、それでもトランプコロナ感染のニュースはマーケットにショックを与えました。

トランプ氏は発熱も確認されたため、軍の医療センターに入院しました。報道によるとリジェネロン(REGN)の 抗体カクテルとギリアド(GILD)のレムデシビルを投与されたということです。

雇用統計は予想下回るも追加経済対策期待膨らむ

一方、2日は第一金曜日だったので、9月の雇用統計の発表の日でもありました。

【9月雇用統計 結果】

結果市場予想
非農業部門新規雇用者数66.1万人増85.9万人増
失業率7.9%8.2%

結果は非農業部門の新規雇用者数は予想を下回り、失業率は予想よりも良い数字でした。8月の新規雇用者数は137万人だったので、伸びは鈍化しています。
一方で経済回復鈍化が追加の経済対策の必要性を高めるとして議会での早期妥結期待が膨らんでいます。

トランプ大統領コロナ感染と予想より悪い雇用統計のダブルパンチで金曜日は午前中売りが先行しましたが、午後には下げ渋り、結局S&P500は約1%安でした。午後下げ渋ったのは追加経済対策への期待だとされています。NASDAQは2%超安とハイテク株は売られました。市場では相場の主役がハイテク株から他の分野の銘柄にシフトするのではないかという声が聞こえ始めています。

今後の展望

3つの事柄が今後の相場を左右すると思います。

①トランプ氏の容体と大統領選

今回のトランプ氏のコロナ感染はどちらに有利に働くのかまだ見通せません。

A.トランプ氏が軽症で比較的早く復帰できた場合
トランプ氏はおそらくコロナウィルスに打ち勝ったことを強調して選挙戦に復帰するでしょう。中国ウィルスは恐るるに足らず、といった主張を始めるかもしれません。民主党は軽症で済んだとしても政権の危機管理能力の欠如を攻撃材料にしてくるでしょう。
今でもアメリカではコロナウィルスの存在や脅威に懐疑的な人が一定数います。主要メディアは陰謀論として片付けがちですが、トランプ氏の今後の言動次第でそういった勢力が勢いを増す可能性は十分あると思います。

B.トランプ氏が重症に陥る or 療養が長引く
こちらはトランプ陣営が絶対に避けたいシナリオです。トランプ氏が重体に陥ったり、症状自体はそう重くはないが療養が長引けば選挙戦でのダメージは大きくなるでしょう。トランプ氏の症状に関わらず民主党は政権の感染対策・危機管理を攻撃材料にしてくるので、その批判に大きな説得力を与えることになります。重症に陥らずとも療養が長引けば、バイデン氏との討論会や選挙集会も実施できないので大きなダメージになると思います。

以前、『誰が大統領でも米国株の将来にはあまり関係ない』という投稿をしましたが、これはあくまでも長期での話です。短期・中期では大統領選の結果は大きな影響を及ぼします。今回のトランプ大統領コロナ感染というニュースだけでもマーケットへの影響の大きさはかなりのものでした。
大統領選の結果が株価に影響を与えるもっとも大きな根拠は2人の候補の大企業に対する税政策の違いです。トランプ氏は大企業に対する減税を政策の柱にしています。一方、民主党のバイデン氏は大企業へはむしろ増税を行って、貧困層へ富の再分配をするべきと主張しています。バイデン氏が勝利し、大企業への増税が実行されれば、各企業のEPS(1株あたり利益)はその分押し下げられるので株価の下落材料になります。

②議会での追加経済対策のゆくえ

こちらも大きな不確定要素です。結果は共和党・民主党の協議に委ねられています。共和党・民主党は大統領選だけでなく、議会選挙も控えているので簡単にお互い譲歩できないと思いますが、一方であまりそれぞれの主張に固執しすぎると「党利党略しか考えていない」と世論から批判を受ける可能性もあります。
もし追加経済対策が成立するとすると、おそらくそれは急転直下で決まることになると思いますし、市場にとっては大きなポジティブサプライズになると思います。

③アメリカ国内でのコロナウィルス感染拡大

こちらもどうなるか見通せません。ヨーロッパではスペインで感染が再拡大し首都マドリードはロックダウン、フランスでも状況が悪化してきておりフランス政府はパリでのロックダウンを検討していると報道されています。
アメリカでの新規感染者数は1日、3万人から5万人前後で推移しており、大きく改善には至っていません。死者数は多い日で800人程度と緩やかに改善してきているように見えますが、今後の感染状況でまた増加に転じてしまう可能性も低くはないと思います。一方、第1波の震源地のニューヨーク市では先週からレストランの屋内営業が再開されました。
北半球はこれから秋を経て冬を迎えますが、気温や湿度の低下がどの程度感染拡大に影響を与えるのか、今のところ確実には見通せません。

大統領選の年の10月は相場が安いというアノマリーがあるようですが、不確実要素が3つもある年はなかなか珍しいのではないかと思います。どちらに転んでもこの先1ヶ月、1ヶ月半は相場は荒れ模様になる可能性が高いと思います。