ユニクロの大幅値下げと税込み表示義務化に思うこと

ユニクロが大幅値下げ

先日、ユニクロが全品で9%近い大幅値引きをおこなうとニュースになりました。

こちらはフジテレビのニュース映像ですが、値下げ=お得!といった取り上げ方です。

私もユニクロはよく利用します。持っている下着はほぼ全部ユニクロの商品です。確かに一消費者として値下げは嬉しいニュースだと思います。
しかし、日本経済をマクロで考えるとそう単純に喜べることではないとも思います。


source: tradingeconomics.com

こちらは過去25年間の日本の消費者物価指数(CPI)のチャートです。

100を割り込むと前年比で物価が安くなったことを意味します。つまりデフレです。
90年代後半にわずかにプラス圏に浮上した年もありましたが、2000年以降はアベノミクスで大規模金融緩和が導入された2014年までずっとマイナスでした。つまり、毎年毎年物価が下がっていたということです。

私は1988年生まれなので、物心ついたときから2014年ごろまではずっとデフレ景気の中で生活していたことになります。
もちろん、大学生ぐらいまでは経済ニュースを気にしたことはなかったですし、知識もなく、新聞を読んでもよくわかりませんでした。高校生ぐらいのとき、なんとなく、デフレ=物価が下がる=不景気、ぐらいの認識はありましたが、それがなぜ起こっているのか?であったり、20年以上デフレ状態が続く異常さというものはわかっていなかったと思います。

そんな私でも鮮明に覚えているデフレを象徴する出来事があります。
⬇️こちらです。

2002年にマクドナルドがハンバーガーを1個59円に値下げしたことです。
当時は安くなってラッキーぐらいの感覚しかなかったと思いますが、今、振り返って当時の日本経済の置かれている状況を考えると、ここまで物価下落を容認してしまう経済状態とそれを放置し続けた当時の政府や日銀の責任は非常に重いと思います。

⬆️は1990年以降の日本の実質GDPの推移(単位:円)です。

物価が下がる
⬇️
企業業績が悪化する
⬇️
給与が増えない(もしくは減る)
⬇️
消費が落ち込む
⬇️
モノが売れないのでさらに物価が下がる

このようにデフレスパイラルに陥ったことで90年代以降、20年あまりにわたってGDPは横ばいでした。20年以上日本経済は成長しなかった、俗に言う失われた20年というやつです。

政府・日銀が大規模な金融緩和など適切な処置をしていればここまでデフレが長引くことはなかったと思うと、繰り返しになりますが、当時の政府・日銀の責任は重いと思います。

4月以降は『¥1,980+税』表記は違法に

もうひとつ、今回のニュースで気になったのは税込み表示が4月以降、義務化されるという点です。

私は2つの点で問題があると思います。

1つめは、消費者に10%の消費税負担を見えにくくさせてしまうという点です。

昨年、私はニンテンドースイッチを買いました。定価で29,980円でしたが、消費税として2998円が上乗せされて総額は32,978円でした。
アマゾンで買ったのですが、商品画面の表示価格は29,980円だったので、決済の画面で消費税高いなーと思ったのを覚えています。

しかし、それで良いと思うんです。大きい買い物をするたびに「消費税高いなー」と思わされたほうが税負担の重さを実感できます。

日本人で政治に無関心な人が多い理由のひとつとして、税金の天引き制度が挙げられることがあります。
つまり、自分で1年間の給与のうち、いくらを税金として納めているのか知らないので、自分が税金を負担しているという実感が湧かず、その使い道がどうなっているのかにも関心が向かないという指摘です。

アメリカでは、会社員でもみずから給与計算して確定申告しなければなりません。結果的に皆、自分がいくら税金を払っているのかわかる、そして自分が払っている税金が安くないと思えば、納めた税金が無駄遣いされていないか関心を持つようになりやすいということです。

日本人にとって、消費税は実感しやすい税負担のひとつだと思いますが、今回の税込み表示義務化は、まさに消費税の負担を消費者から隠すような効果があると思います。

そして2つ目の問題点は、企業の利益を国が奪っているという点です。

今回のユニクロがとてもいい例ですが、『1,980円+税』から『2178円(税込)』とすることで、値上げしたような印象を抱かれかねません。
実際は税抜き表示を税込み表示にしただけなので値上げでも何でもないのですが、タグの表示価格が上がるというのは企業にとってイメージのいいことではありません。

ならば、ユニクロのように今までの表示価格を税込み価格にしてしまおうということが起こります。結果的に本来、企業が得られたであろう利益を国が税金として奪っていることになります。

こういう話になると、先ほどのニュース映像の中のフジテレビの柳沢氏のように「大企業は体力があるからいいが、中小の事業者は・・・」という話を持ち出す人がいますが、私はこの話に関しては大企業も中小も関係ないと思います。

問題は企業の規模の大小に関わらず、本来企業に入るはずだった利益を国が奪うことになるという点です。大企業は体力があるからいい、体力のない中小企業にこんなことを強いるなんて許せないというのはかなり的はずれな批判だと思います。

私はMMT論者ではありませんが、一部でMMT(Modern Monetary Theory 現代貨幣理論)に近い考えを持っています。
今、コロナ禍で日本経済は再びデフレに陥る危機に瀕しています。平時ではありません。今は財政規律を考える時ではなく、財政出動してでも経済の回復に力を入れるべきときだと思います。

そんなときに税込み表示の義務化という目に見えにくい形で経済に対してデフレ圧力を強めるのは到底理解できません。この国の政府は本当に失われた20年から教訓を得ているのか、本当に経済を成長軌道に戻そうという気があるのか、疑わしく思ってしまいます。