狂騒の20年代は再びやってくるのか

狂騒の20年代

1920年代のアメリカは狂騒の20年代と称されます。

1914年に勃発した第一次世界大戦ではヨーロッパ全土が戦場と化しました。1920年代に世界のパワーバランスの中心地が焦土と化したヨーロッパからアメリカに移ります。時代の大きな転換点でした。

自動車・映画などの新しい製品が登場し、社会の工業化に伴う大量生産・大量消費の時代が到来しました。1920年代のアメリカは文化的には「ジャズ・エイジ」と呼ばれています。
音楽の分野ではジャズが登場し、文学ではF・スコット・フィッツジェラルドやアーネスト・ヘミングウェイ、スポーツではアメリカスポーツ史上最大のヒーローと言われるベーブ・ルースが活躍する、とにかく華やかな時代でした。

フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』は狂騒の20年代を象徴する作品で、数年前にはレオナルド・ディカプリオ主演で映画化されました。
私は大学時代に小説版の『グレート・ギャツビー』を読んでから映画を観ました。映画版はオリジナルにはない脚色が強く、あまり好きではなかった記憶がありますが、20年代のファッションや文化の空気感を視覚的に味わうにはいい作品だと思います。個人的には小説のほうが好きです。

大量生産・大量消費が華開いた時代ですから、株式市場も当然絶好調でした。

ダウ平均株価の1920年から1929年までのパフォーマンスです。当時、S&P500指数はまだありませんでした。

ダウ平均は10年間で3.5倍のパフォーマンスです。複利換算すると年率13.5%という驚異的なパフォーマンスです。ちなみに2010年代も世界的に株価が非常に好調な時代でしたが、ダウ平均のパフォーマンスは10年で約1.7倍、年率換算で6%程度のパフォーマンスでした。

アメリカのGDP(国内総生産)は1920年の68.8億ドルから1929年には9770億ドルまで急成長します。10年間で142倍です。ヨーロッパの復興需要と急速な工業化が成長エンジンでした。

ただし、株価は特に1928年、1929年に急上昇しています。まさにバブルの状態で、1929年に株価大暴落を迎え世界恐慌が起こります。その後、暴落前の最高値の水準を回復したのは25年後の1954年でした。

2020年代に狂騒の20年代の再現はあるのか

狂騒の20年代は1918年に終結した第一次世界大戦によるヨーロッパの荒廃が大きなきっかけになりました。それまでのヨーロッパ中心の世界秩序がガラリと変わり、政治的にも経済的にもアメリカが世界の覇権を握ることになりました。

2020年現在のアメリカはいまだ絶大な影響力を持つ世界で唯一の超大国です。1920年時点のアメリカの立ち位置とは大きく異なります。

また、経済的には世界で最も成熟した国のひとつです。この先10年間でアメリカのGDPが100倍以上に成長することは考えにくいです。

一方で1920年代との共通点もあります。
私がもっとも似ていると思う点は新しい技術や製品の登場とそれに伴う社会変化の真っ只中にあるという点です。

1920年代は自動車などの新しい工業製品が生まれ、工業化が大きく進んだことで生産性が上がり急激な経済成長に繋がりました。

2020年代にも社会構造を変えうると期待される新しい技術があります。インターネット技術のさらなる発展とAI(人工知能)です。
特にAIの普及や各分野への応用は人々の働き方や生産性をガラリと変える可能性を秘めています。自動運転が完全に普及すれば、車を運転する職業(トラック・タクシー・バスなどの運転手)は無くなります。個人レベルで考えるとその職に就いている人々にとっては失業の危機ですが、社会全体で考えれば余剰労働力が生まれ、その労働力を他の生産性の高い仕事に回すことができます。

以前ご紹介した『ライフサイクル投資術』という本では、過去のあらゆる年代で積立投資をした場合のモデルケースが示されています。

このモデルケースによると、たとえ史上最大の暴落だった1929年の株価大暴落の前に長期の積立投資を始めていたとしても、また、大暴落翌年の1930年に長期の積立投資を終えていたとしても全体のパフォーマンスがプラスであることが示されています。

歴史は繰り返します。
2020年代が再び狂騒の20年代になる可能性もありますが、2029年に再び株価が10分の1になってしまう大暴落があるとしても、20年、30年という長期で積立投資をしていればパフォーマンスを心配する必要はほとんどないと思います。