先日はウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ)の4-6月期の動きをご紹介しました。
今の時期、4-6月期の機関投資家の動きが報告されニュースになる時期です。今回は先日、ソフトバンクグループの決算発表で設立が発表された投資子会社による投資行動を分析したいと思います。
その前に・・・4.5兆円資金化の答え合わせ
その前に3月に発表されていたソフトバンクGの資産のうち4.5兆円を売却する資金化計画で、6月までに9割以上が完了したとしてその内訳が公表されました。
私は以前、4.5兆円の資金を捻出するためにアームの売却もありうるとし、
- アリババ
- ソフトバンクKK
- アーム
上記3つの資産を売却して4.5兆円を捻出するのではないかと予想しましたが、結果は外れました。

内訳は上のグラフのとおりでした。
ソフトバンクKKの大幅な売却はやはり行われませんでしたが、Tモバイルの株式を2.4兆円売却しました。
アームの売却は交渉が進められていることは事実のようですが、交渉中であるとして詳細は明かされませんでした。
投資運用会社の設立とポートフォリオ
11日の孫社長の決算発表プレゼンの最後に投資運用子会社の設立が発表されました。

ソフトバンクGと孫社長個人の出資で子会社を設立するという発表でした。手元余剰資金の運用が主な目的です。
決算発表会ではこれ以上の詳細は発表されませんでしたが、アメリカの証券取引委員会(SEC)に提出した報告書によってどのような投資活動が行われたのかが明らかになりました。
6月末時点で25社に総額39億ドルを投資しています。ポートフォリオの構成順位上位10銘柄とその構成比率は以下のとおりです。
銘柄 | 金額 | 比重 |
---|---|---|
アマゾン(AMZN) | 10億4400万ドル | 27.8% |
アルファベット(GOOGL) | 4億7500万ドル | 12.6% |
アドビ(ADBE) | 2億4900万ドル | 6.6% |
ネットフリックス(NFLX) | 1億8900万ドル | 5.0% |
マイクロソフト(MSFT) | 1億8300万ドル | 4.8% |
エヌビディア(NVDA) | 1億8100万ドル | 4.8% |
テスラ(TSLA) | 1億2300万ドル | 3.3% |
ショッピファイ(SHOP) | 1億1400万ドル | 3.0% |
ペイパル(PYPL) | 1億1100万ドル | 3.0% |
ドキュサイン(DOCU) | 1億900万ドル | 2.9% |
アマゾンに投資総額の25%以上を投資しています。孫社長は兼ねてから2000年代初頭にアマゾンに投資できなかったことを後悔していると公言していましたが、今から投資しても十分、リターンが期待できると判断したものと思われます。
ポートフォリオにはアメリカのITの大手企業が名を連ねていてある意味、妥当な銘柄が並んでいると思いましたが、アップルが入っていないのは少し意外でした。
孫社長はアップルの創業者スティーブ・ジョブズと公私に渡って親しく、iPhone発売後数年は日本でのiPhoneの販売がソフトバンクに独占されていたほどです。その後、ジョブズが亡くなり、通信他社でのiPhoneの販売も解禁されたため、現在は特別な関係にあるわけではないと思いますが、絶好調のNASDAQ市場を先頭で引っ張っているアップルに投資しなかった理由は個人的に気になるところです。ちなみにGAFAMのうち、アップルと同様にフェイスブックもポートフォリオに入りませんでした。
また、ソフトバンクGはかつてエヌビディアに投資していましたが、2018年の下落局面で全株売却していました。その時の売却価格の平均が1株あたり218ドルだったと公表されていますが、今年の4-6月は240-380ドルでの推移だったので結果論で言えば、あの時売らないほうが良かったのに、という結果になっています。おそらく孫社長は気にしていないと思いますが。
ソフトバンクGは運用総資産10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を運営していますが、SVFは主にユニコーンと呼ばれる上場前の有望ベンチャー企業に投資をしています。新型コロナウィルスの影響で新規上場(IPO)市場は非常に厳しい環境です。SVFが投資しているユニコーン企業も少なからず新規上場を遅らすなどの影響を受けていると思われます。そういった環境の中、コロナ禍でも業績が好調なアメリカのIT大手への投資に踏み切ったと考えられます。
今回の決算発表ではこの件に関する情報は子会社を設立しましたという情報に限られました。投資判断の基準や想定している投資期間などが個人的には非常に気になるところです。次回の決算発表で何らかの情報提供があることを期待しています。
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