特殊な知識もキャリアもないのに優良企業の利害関係者になるには?

あなたの能力や経験によって差別されないところが株式投資の素晴らしいところ

先日のモデルナのワクチンの記事で、バイオ医学に関する知識がない私のような素人がワクチン開発が成功するかどうかを事前に予測するなんて無理ゲーだという趣旨のことを書きました。

しかし逆に考えると、バイオ医学の知識のない素人でも、昨年の5月にモデルナに投資していれば、現代医学の叡智の結晶である新型コロナワクチンが生み出す利益の分け前にありつくことができたということです。

さらっと書きましたが、これってなかなかすごいことだと思いませんか?

モデルナは世界有数の超優良バイオテクノロジー企業です。モデルナで働いている従業員の多くはおそらく、バイオ医学の世界で超が付くほどのエリートたちでしょう。
生まれてこのかた、理科学系の科目が得意だったことがない私のような人間は、逆立ちをしてさらに世界がひっくり返ったとしても就職できないような会社です。

モデルナの経営者はおろか、平の社員にすらなれない私が、モデルナが生み出す利益の一部を享受できる唯一の道があります。それが株式投資です。

従業員や経営者として超優良企業に勤めることは誰にでもできることではありません。
優秀な大学を出ていたり、特定の分野での豊富な経験やキャリアが求められます。

その点、株式投資はある意味、平等です。
株式が公開されている会社であれば、誰でも株主になれます。医薬品メーカーの株主になるのに、医学の知識やその分野でのキャリアはまったく必要ありません。
例えば、モデルナの現在の株価は219ドル(約24,000円)ですが、24,000円を出せば誰でも株主になることができます。

株を買おうと発注したら会社側から『慎重に選考を重ねました結果、今回はご希望に添えかねる結果となりました。貴殿の今後のご活躍をお祈り申し上げます』なんてメールが届いて株主になれない、なんてことは絶対にあり得ません。

誰でも経歴や能力に関係なく、ある一定のお金を払えば株主になって、会社の利益の一部を享受できるようになります。

ズブの素人株主が会社の利益の一部をいただくことができるのはリスクを負担しているから

では、なぜ株式を公開している企業は、優秀な自社の従業員の努力によって稼いだ貴重な利益を、どこの馬の骨だかわからない株主に渡すようなことを行なっているのでしょうか?

それは、会社のリスクを株主が負担しているからです。

会社は誰のものか?という問いが話題になることがあります。

会社は株主のものだ、いや従業員のものだ、いやいやお客様のものだ、はたまた社会全体のものだ等々、いろいろな考え方があり、正解のない問いだと思います。

会社が株主のものかどうかは議論の余地があるかもしれませんが、会社のリスクを負っているのは間違いなく株主であり、それこそが株主の唯一と言っていい存在意義でもあります。

例えば、ある会社が破産をして会社を清算したとしましょう。
清算した会社の資産や利益は従業員の給与、取引先への支払い、取引銀行への債務の返済に充てられます。そしてすべての債務を返済してそれでも資産が残ったら、株主への分配金に充てられます。株主への還元は最後の最後です。

昔、私の伯父がJALの株主でした。
JALでは株主優待として国内航空券の割引券が株主に配られます。私の伯父は株主優待の割引券が届くと、毎回せっせと金券ショップに持ち込んで現金化していました。
彼はJALの財務を分析して、JALが将来長期にわたって利益を生み出すに違いないと信じて株主になったのではなく、単純に小遣い稼ぎとして配当と株主優待を目当てに株主になったようでした。

2010年1月、JALは経営破綻し上場廃止となります。伯父が持っていたJAL株の価値はゼロになりました。

それ以来、伯父は「もう株式投資は懲り懲りだ」といって一切の株式投資をやめてしまいました。
私はその後、伯父と投資に関する話をしたことがないので、「投資なんかやめておけ」と強要されることはありませんが、本人が投資の世界に足を踏み入れることはおそらく二度とないでしょう。

少し冷たい言い方かもしれませんが、私の伯父は株式投資とそのリスクの本質を理解せず、配当と株主優待という目先の利益だけを見て株式投資をしていたので、いざリスクが顕在化したとき、対応できずにそのまま市場から強制退場という結果になってしまったと思います。

株式投資をするのに優れた経歴や特別な能力・知識は必要ありませんが、そのリスクをしっかり理解しておかないと、リスクが顕在化したときに対応できず、結局大きな損失を抱えて市場から強制退場しなくてはならないという結果に終わってしまう可能性があります。


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