バフェットは依然として沈黙
先日、バフェットがコロナの下落相場の中で株を売却したという記事を書きました。
本来、バフェットは下落相場で株価が本来価値を下回るまでに売られたときに買い増して儲ける投資スタイルです。その後、相場が堅調に推移していることもあり、バフェットに目立った動きあはありません。
一方で大幅に買い増している投資家もいます。
サウジ政府系投資ファンド パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とは
サウジアラビアの政府系投資ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は1〜3月期以降、株式を大きく買い増している機関投資家のうちのひとつです。
サウジアラビア、カタール、UAEなどの中東の産油国は石油産業依存からの脱却を図っています。現在、石油産業は金のなる木のようなもので、石油によって国が潤っていますが、エネルギーの石油依存の脱却という流れが今後世界中で進むと考えられていることや、石油埋蔵量も有限であることから、産油国は将来に危機感を持っています。
代替産業として目されているものが2つあり、観光業と金融業です。

観光業として、カタール航空やエミレーツ航空などの航空会社と巨大なハブ空港を整備して、直接自国を訪れる観光客だけでなく、ハブ空港で乗り継ぐ乗客の呼び込みを図り、こちらは一定程度の成果が出てきています。
カタール航空、エミレーツ航空ともに利用したことがありますが、サービスは素晴らしく、空港は綺麗で非常に設備が整っています。カタール航空を利用した際にはドーハでの乗り継ぎ時間が長かったので、カタール航空が用意した5つ星ホテルに1晩滞在するというサービスを利用しました。空港送迎と宿泊費はカタール航空の負担で一切追加料金は発生せず、オイルマネーの凄さを肌身を持って実感しました。
サウジアラビアはメッカとメディナというイスラム教の2大聖地を抱えており、宗教的に非常に保守的な国で巡礼のイスラム教徒以外の観光客の入国は基本的に認めてきませんでしたので、カタール、UAEと比べると観光業では大きく遅れをとっています。昨年からイスラム教徒以外の観光客の受け入れを開始しました。
もうひとつの柱が金融業です。各国、石油で儲けた外貨を原資に投資ファンドを設立し、さまざまな分野に投資をしています。中でもサウジアラビアの政府系投資ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がコロナによる株価下落に積極的に買い向かっているようです。
PIFのポートフォリオ
2020年3月末時点で公表されているポートフォリオの構成銘柄上位10銘柄です。
銘柄 | 国 | 金額(千ドル) | セグメント |
---|---|---|---|
ウーバー(UBER) | アメリカ | 2,033,708 | テクノロジー |
BP(BP)※ | イギリス | 827,751 | 石油 |
ボーイング(BA)※ | アメリカ | 713,677 | 資本財 |
シティグループ(C) | アメリカ | 521,979 | 金融 |
フェイスブック(FB) | アメリカ | 521,859 | テクノロジー |
マリオット・インターナショナル(MAR) | アメリカ | 513,931 | 景気連動型消費財 |
ディズニー(DIS) | アメリカ | 495,802 | コミュニケーションサービス |
シスコシステムズ(CSCO) | アメリカ | 490,881 | テクノロジー |
バンク・オブ・アメリカ(BAC) | アメリカ | 487,569 | 金融 |
ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS.A)※ | イギリス/オランダ | 483,643 | 石油 |
個別銘柄ではないので投資額が公表されていませんが、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)には450億ドル出資していると報道されています。
こうやって見ると、意外と保守的というか王道な銘柄選択ではないでしょうか(SVFとウーバーはなかなか挑戦的ですが)。
トップ10外の主な銘柄は、クルーズ船のカーニバル(CCL)、鉄道のユニオン・パシフィック(UNP)、製薬のファイザー(PFE)、バフェットのバークシャー ・ハサウェイ(BRK.B)、旅行予約サイトのブッキングドットコム(BKNG)、半導体のクアルコム(QCOM)、テクノロジーのIBM(IBM)、コーヒーチェーンのスターバックス(SBUX)などです。電気自動車のテスラ(TSLA)にも投資していましたが、前四半期中にすべて売却しています。
バークシャー はA株(BRK.A)ではなく、B株(BRK.B)なんだと少し意外に思いました。A株は1株27万ドル前後ですがB株より株主総会の議決権は優位です。
最近のPIFの動き
ポートフォリオの一覧の中の※は1〜3月期に新規に投資した銘柄です。総額77億ドル相当を購入したと報道されています。積極的に投資しているのがわかります。
私がホールドか売却か迷っているボーイングには買い向かっています。政府系投資ファンドという性格上、長期目線で投資判断していると思いますが、ボーイングは長期的には割安、今回の下落は買い場だと判断したのでしょうか。
ここ数日で入ってきたニュースが2件あります。
①ブラックロック(BLK)を購入
資産運用会社のブラックロックの筆頭株主PNCファイナンシャル・サービシズ・グループが売却した際、カタールやクウェートの政府系ファンドとともにPIFも購入したとのこと。売り出し価格は1株420ドルと報道されています。ブラックロックは以前から気になっていますが、まだしっかり調べきれてはいないのでまた別の機会に記事にしたいと思います。
②PIFに外貨準備400億ドル注入
3月に150億ドル、4月に250億ドルそれぞれPIFに注入したとのこと。さらにPIFは保有資金をサウジリヤルからドルに交換。1〜3月期の新規投資額が77億ドルですから、今後の下落局面ではさらに追加投資する計画であると思われます。
政府系ファンドは投資規模が個人投資家とは文字通りケタ違いですが、今後も参考にしていきたいと思います。
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