ソーシャルメディアは事実の裁定者なのか

ソーシャルメディアは報道機関か?

アメリカミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が警察官に拘束された際に死亡した事件がアメリカ国内で大きな波紋を広げています。
コロナも完全に収束していない中で抗議デモが米国各都市で起こっていて、一部が暴徒化する騒ぎになっています。
事件後のトランプ大統領のツイッターでの投稿とツイッター社(TWTR)の対応がソーシャルメディアのあり方をめぐる議論を呼んでいます。

「ソーシャルメディアは報道機関か?」

私はインターネット上のプラットフォーム関連の会社ではグーグルの親会社のアルファベット(GOOGL)とフェイスブック(FB)に投資をしています。プラットフォームの大きな魅力の一つはネットワーク効果です。皆が使っていることこそ、FBの大きな優位性です。そのために信頼性を担保することは企業の大きな責任だと思います。信頼性が失われれば利用者は減っていくでしょう。企業の優位性を揺るがしかねない事態に発展する可能性もあります。

きっかけはトランプ大統領のツイッター

今回の事件のきっかけはトランプ大統領のツイッターです。

翻訳するとこのような内容です。

悪党たち(抗議デモ参加者たち)はジョージ・フロイド(殺害された黒人男性)の追悼を辱めていて、看過できない。(中略)略奪が始まれば、銃撃が始まる。

トランプ大統領は事件後から一貫して抗議デモに対して強硬な態度を取り続けてきました。ツイッター社はこのツイートを表示する際、以下のような警告を表示させる対応を取りました。

これにトランプ大統領が反発、ソーシャルメディア企業を規制、閉鎖させると発言し、ソーシャルメディア企業の規制強化に向けた大統領令に署名しました。

フェイスブック社マーク・ザッカーバーグCEOの反応

一方、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはツイッター社を批判しています。

フェイスブックもしくはインターネットプラットフォームが事実の仲裁人であるべきとは考えない。何が事実で何がそうでないかを決めることは危険な一線だ

マーク・ザッカーバーグの発言(ロイター通信の報道より)

この発言はFOXニュースのインタビューでの発言で、FOXニュースというのがザッカーバーグの意図を推察するひとつのポイントになると思います。
FOXニュースはアメリカの大手テレビ局FOXのニュースチャンネルで、非常に保守寄り、共和党寄りの報道姿勢で知られています。つまり、この発言はトランプ大統領とその支持者を強く意識した発言だと言えるかと思います。

ソーシャルメディアが信頼性を担保するには?

この事件は「ソーシャルメディアは報道機関か?」という問いに帰結すると思います。

従来の報道機関は報道内容にある一定の責任を有すると考えられています。報道内容に関して、事実確認(ファクトチェック)の義務を負っているという考え方が一般的です。ソーシャルメディアが報道機関であるとすれば、ソーシャルメディアはそれぞれの投稿内容に関して、事実確認の義務を負い、事実に反する投稿に関しては対処する必要があることになります。
一方で、それは検閲であり、表現の自由を脅かしかねないという反対論があります。そういったことが許されるなら、ある特定の考えを運営会社がソーシャルメディア上から締め出す、意見やイデオロギーの取捨選択ができてしまうという意見です。FBのマーク・ザッカーバーグはこちらの考えでしょう。

これはトランプ大統領当選のときから常に議論されて続けている問題です。アメリカではソーシャルメディアの選挙への影響力は非常に大きいです。前回の大統領選挙の際にもソーシャルメディアでのフェイクニュースが選挙戦に与える影響が議論になりました。
以前、この問題に関してザッカーバーグは以下のように発言しています。

現在、既存の業界向けに2つの枠組みがあると考えている。新聞や従来のメディア、そして通信会社のようなモデルだ。ソーシャルメディアはそれらの間に位置していると考える。

マーク・ザッカーバーグの発言(ロイター通信の報道より)

通信会社については「データを流すだけ」で、電話回線で誰かが害を及ぼす発言をしたとしても責任を負わされることはないと指摘しています。

冒頭述べたように、ネットワーク効果を担保するには信頼性は非常に重要です。しかし、この問題の難しいところは、ファクトチェックの強化=信頼性の担保という風に単純にはならないということです。ファクトチェックの強化=意見・イデオロギーの取捨選択と人々に思われてしまえば、ソーシャルメディアに対する信頼性は大きく損なわれてしまいます。