トランプ支持者が議会議事堂へ乱入 トランプ支持者はどんな人たちなのか?

トランプ支持者が議会議事堂へ乱入

朝起きて、テレビをつけて驚きました。
トランプ支持者が連邦議会議事堂に乱入したというニュース映像が流れていました。

写真:Reuters

議会では次期大統領選出の手続きが進められていましたが、議員たちは会議を中断して避難する事態になりました。
日本時間午前10時(現地時間6日午後8時)に会議は再開されています。先ほど、アリゾナ州での選挙結果に対する異議に賛同するか採決が取られ、反対多数で退けられました。次期大統領選出の一連の手続きは夜を徹して進められる見込みです。

トランプ支持者はどんな人たちなのか?

今回の大統領選挙の結果を地図で示したものです。
トランプ氏が勝利したのは南部や中西部の地域です。

今回、トランプ氏は敗れたとはいえ7000万票、得票率で47%もの票を獲得しました。アメリカ史上、もっとも多くの票を獲得した現職大統領だそうです。

よく、トランプ支持者=白人至上主義者や極右といったレッテルを貼られがちですが、現実的に白人至上主義者や極右勢力だけで7000万もの票を獲得することは不可能です。

トランプ氏を支持しているのは中西部や南部の白人の労働者層です。
アメリカは格差社会と言われますが、低所得者層には黒人などの有色人種だけではなく、多くの白人労働者層が含まれます。
彼らは南部やラストベルト(錆びた地帯)と呼ばれる中西部で盛んだった自動車産業や石炭・鉄鋼産業に従事していたブルーカラーの人々でアメリカの産業構造の変化に取り残されてしまった人々です。

90年代以降、インターネットの普及による技術革新によってアメリカの産業構造は大きく変わりました。産業の中心は重工業からシリコンバレーを中心としたIT産業へシフトしていき、富も極端にそちらに流れていきました。
シリコンバレーで多くの億万長者が生まれた一方で、南部・中西部の多くの白人労働者層は時代の流れにすっかり取り残されてしまいました。

彼らは格差社会の中でいわば虐げられている階層です。政策を純粋に捉えれば所得の再分配を訴えて格差社会是正を目指す民主党に共感してもおかしくない層ですが、それは起きえません。

彼らの多くにとって、キリスト教が生活の根幹だからです。彼らにとって同性婚や人工妊娠中絶は格差拡大よりも受け入れ難いものです。さらにシリコンバレーの若い成功者たちの多くが民主党支持者であることも、彼らの民主党に対する先入観を最悪なものとしています。
彼らは自動車産業や鉄鋼業の衰退に伴って職や家を失ったり、給料が伸びなかったりして不満を溜めていました。

⬆️はアメリカの過去40年のインフレ率の推移です。
バブル崩壊以降の日本ではデフレが長く続いたので、給料が伸びないことは現状維持を長らく意味してきましたが、アメリカでは90年代以降でもインフレ率が年率で2%から3%台で推移してきたので、名目の給料が伸びないということは実質的には給料が目減りしていることを意味します。年率2%、3%でも複利効果で20年、30年経てば大きな差になっていきます。

こうして南部や中西部の白人の労働者階級の人々は不満を抱き続けてきましたが、その不満の受け皿とな政党がありませんでした。共和党も民主党も彼らの不満を汲み取ろうとせず、放置してきました。

そこにトランプ大統領が現れ、彼らの代弁者たらんとしていろいろな主張を始めます。それが国内の雇用を守るための移民排斥であったり、中国からの輸入を制限するという政策であったりしたわけです。

長らく連邦政府の政治家たちに無視し続けられてきた白人労働者層にとってトランプ大統領はまさに救世主です。さらにそこに、アメリカは巨大ハイテク企業や民主党、主要メディアからなる『ディープステート』によって牛耳られていて、トランプ大統領は『ディープステート』に一人で立ち向かっているという陰謀論も加わって彼らに対するトランプ大統領への支持は端から見たら盲信とも思えるような熱狂的なものとなります。

よくよく考えれば、トランプ氏はニューヨーク出身の億万長者であるし、トランプ政権にはゴールドマンサックス出身のムニューシン財務長官など、一見すると彼らが敵視する『ディープステート』側の人間では?とも思えるような人たちがいて矛盾しているようにも見えますが、そこは先日記事にした国民感情の火が矛盾を掻き消します。激しい怒りの感情は些細な不都合の受け入れを寛容にさせます。

今回の議事堂占拠の一連の騒動は南部・中西部の白人労働者層を中心とした人々の不満の一端が表出したに過ぎません。トランプ大統領が諸悪の根源のように言われることも多いですが、物事はそんな単純なものではなく、アメリカという国の社会構造に深く根差したものだと思います。

最近30年のアメリカの株式市場のリターンは素晴らしいものがありますが、富の偏在が格差をさらに拡大させ、国を分断させるという副作用も招いてしまっています。